ロシアと北朝鮮の首脳がこの6月に会談し、新たな条約に署名しました。一方が軍事攻撃されたときに、もう一方が支援することを約束する内容が含まれており、事実上の「ロ朝軍事同盟」の成立と言われています。両国はなぜ今、このような条約を結ぶことになったのでしょうか。複雑な国際関係が絡んでいる背景を含めて、やさしく解説します。
(西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス)
戦争になったら相互にあらゆる支援
ロシアのプーチン大統領は6月19日、24年ぶりに北朝鮮の平壌を訪問し、金正恩総書記と会談しました。この場で両首脳は「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名しました。
条約では、ロ朝のどちらか一方が他国からの軍事侵攻を受けて戦争状態に置かれた場合、もう一方は軍事面を含むあらゆる支援を直ちに行うという内容が含まれています。この条項は、国連加盟国の個別的・集団的自衛権を認めた国連憲章51条、およびロ朝それぞれの国内法に基づいて実施されることが明記されています。
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ロシアにとってこの条約は、ウクライナ侵攻の長期化は避けられないという見通しの下、北朝鮮からの支援を将来にわたって確実にするという重要な意味を持ちます。ウクライナでの戦争は、開始から2年を過ぎた今も激しい戦闘が続いています。
ウクライナに対しては欧米諸国が強力な軍事支援を継続しているうえ、G7(主要7カ国)はロシアの資産を凍結して、ウクライナ支援に利用することを決めました。米国はウクライナに対し、米国製兵器を使ったロシア領内の攻撃も容認しました。
ロシア軍には弾薬不足も指摘され、いかに外国から武器や弾薬を調達するかが戦いを継続するための鍵を握ります。北朝鮮はすでにロシアの民間軍事会社ワグネルを通して弾道ミサイルや弾薬を供給しています。新たな条約によってこの協力関係を確立するとともに、米韓などの目をウクライナ支援からそらすことも狙っています。
一方、北朝鮮にはどんなメリットがあるのでしょうか。