ウクライナ侵攻が流れを変えた

 韓国でクーデターが起き、軍事政権(朴正煕政権)が樹立された1961年、危機感を強めたソ連と北朝鮮は「友好協力相互援助条約」を締結します。今回の条約と同様、一方が攻撃されればもう一方が即座に支援するという条文が含まれています。

 この条約は1991年のソ連崩壊(=冷戦終結)に伴って失効しました。ソ連を継承したロシアは韓国と国交を樹立するなど、北朝鮮と少し距離を置くようになります。2000年に大統領に就任したプーチン氏は、北朝鮮との関係改善に乗り出し、金正日・前総書記との間で「友好善隣協力条約」を結びました。ただ、その中には相互の防衛義務は含まれていませんでした。

 ロシアはその後も北朝鮮に対し、慎重な態度で臨みます。国連安保理の北朝鮮制裁決議や朝鮮半島の非核化を目指す日米中ロと南北朝鮮の「6者協議」にも、ロシアは基本的に北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制する姿勢で臨みました。

 しかし、2022年のウクライナ侵攻が流れを大きく変えました。

 欧米諸国はウクライナにミサイルや戦車などを供与するだけでなく、これまで軍事的に中立を保ってきたスウェーデンやフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に加盟するなど、ロシアへの圧力を強めていきました。

 ロシアのウクライナ侵攻は国際法違反であり、即座に撤退すべきだというのが欧米をはじめ国際世論の大勢です。これに対し、条約という形を整えて軍事協力を進め、国際的孤立を回避しようという意図が、ロシアにはあるようです。