反プーチンを掲げ、ロシアの獄中で死亡したアレクセイ・ナワリヌイ氏の自伝が注目を集めている。10月下旬に日本を含む11カ国で発売される同著には、獄中での卑劣な扱いに屈することなく、死を覚悟しつつもユーモアを忘れないナワリヌイ氏の言葉が綴られている。ロシア国内で流通させることは困難と見られるが、ナワリヌイ氏の遺志を継いだ妻ユリア氏は同著がロシア内外で打倒プーチンの起爆剤となることを期待する。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
ロシアの反体制派の急先鋒で、今年2月極北の刑務所で死亡したアレクセイ・ナワリヌイ氏の自伝『Patriot(愛国者)』が今月、日本語を含む11カ国語で発売される(邦題:『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』(講談社))。これに先立ち、米ニューヨーカー誌、並びに英タイムズ紙などが、その一部抜粋をそれぞれの媒体に掲載した*1,*2。
*1:Alexei Navalny’s Prison Diaries(THE NEW YORKER)
*2:Alexei Navalny’s secret prison diary: ‘This will be my memorial’(THE TIMES)
上記の記事のタイトルはいずれも「ナワリヌイのプリズン・ダイアリー」だ。タイムズ紙の抜粋部分には主に、その名の通りナワリヌイ氏が2021年、ロシアで逮捕されてから過ごした刑務所での体験が日記形式で綴られている。タイムズ紙は同著の抜粋に加え、同時期にナワリヌイ氏がインスタグラムに投稿した内容も織り交ぜて掲載した。
記事によるとこの時期、ナワリヌイ氏は刑務所内で適切な医療を受けられないことに抗議し、ハンストを開始した。娘のダリアさん(23)が以前、米CNNに明かしたところによると、ナワリヌイ氏は身長およそ192センチの長身だった。同氏がハンストを開始した直後の2021年4月1日の日記で、1月に収監された際は93キロだった体重が、勾留後85キロに落ちたと記している。ハンスト終了後の5月には、79.7キロだったという。
ハンスト敢行中、食べ物を拒否するナワリヌイ氏は、いつの間にかポケットに菓子が仕込まれる嫌がらせを受けた。ロシア国営放送の記者がハンストする同氏の様子を取材し「ここの環境は理想的で最高だ。ナワリヌイは偽善者で怠け者。彼は全く苦痛を得てなどいない」と報じたことなどが記されている。