ロシア国内のナワリヌイ支持者に遺志は伝わるか

 こうした事情により、ナワリヌイ氏が最も自身の思いを告げたかったであろう、愛する祖国の人たちに発売後すぐに同著が届き、ロシア国内でベストセラーになるという可能性は低いかもしれない。

 しかし、ナワリヌイ氏の死後、当局に拘束される可能性があるにもかかわらず、今年3月モスクワでの同氏の葬儀には数千人に及ぶとも言われた人たちが参列した。

 ナワリヌイ氏の友人で、反汚職活動家のビル・ブラウダー氏は英タイムズ紙のラジオ番組に出演し、葬儀に参列した多くの人たちに加え、当局の追及を恐れて街に繰り出せずとも、同氏を支援した人たちが他にも大勢いるはずだと話した*4

*4Bill Browder reacts to Alexei Navalny's prison diaries(TIMES RADIO)

 ブラウダー氏はまた、ロシアにおいて自由かつ公平な選挙が行われていたのなら、ロシア人8割の票を得てナワリヌイ氏が大統領に選ばれていただろうとも語っている。当局の追及を恐れ、強権政治を見て見ぬふりをする人たちがいる一方で、実際にはロシアで何が起きているかを知り、また、ナワリヌイ氏が獄中で殺害されたことを知るロシア人は多いとも語っている。

「(ナワリヌイ氏)は経験したこと全てに動じることなく、プーチンによる数々のひどい仕打ちにも笑ったりジョークを言ったりして、決して打ちのめされないことを示した。こうした精神状態はただ称賛に値するだけでなく、他者へのインスピレーションにもなった。他の誰もがプーチンから圧力や拷問を受けているからだ」「そのことが人々に希望とインスピレーションを与えた。アレクセイ・ナワリヌイの存在は(プーチン氏にとって)恐ろしいもので(略)耐え難い状況であった」(ブラウダー氏)