- ロシアのモスクワ郊外で起きたテロ事件を機に、政府与党や当局などの言動や行動が過激さを増している。
- 凍結していた死刑の復活を求める声が高まっているほか、テロの実行犯を激しく拷問した形跡もある。連邦保安局(FSB)はウクライナばかりか米英の関与までほのめかした。
- プーチン政権にはテロをウクライナ攻撃のプロパガンダに結びつける意図があるとの見方が強まっている。(JBpress)
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
3月22日夜(現地時間)、モスクワ郊外のコンサートホールで起きた襲撃事件では、少なくとも143人が犠牲となった。26日時点では2人の子供を含む重篤な患者がおり、行方不明者もまだ相当数いるのではないかとされている。さらに犠牲者の数が増える懸念もある。同市で100人以上の犠牲者が出た同様のテロ攻撃は、20年以上前のことだ。現場となったクロッカス・シティホールには献花を行う人々が絶え間なく訪れ、やり場のない悲しみや憤りを口にした。
中東の衛星放送局・アルジャジーラの取材に応じた男性は「ひどいことが起きた、本当に理解できない。醜いテロ行為で、奴らは動物だ」と怒りをあらわにした。欧米メディアの報道によると、犠牲者の中には今月27日に誕生日を迎えるはずだった34歳の男性や、ヨガが大好きだった46歳の女性などが含まれる。子供も複数確認されている。
国民感情として、コンサートを楽しむためだけにその場に居合わせた、無辜(むこ)の人たちを標的にしたテロの実行犯を憎む気持ちは、ごく自然なものだろう。
その感情を代弁するかのごとく、過激な発言が目立つのがメドベージェフ前大統領だ。同氏は25日、通信アプリ「テレグラム」で、実行犯を逮捕した当局を労った上でこう発言している。
「奴らを殺すべきか?当然だ」「しかしさらに重要なのは、関連した全員を殺すことだ。全員だ。資金提供したもの、共感したもの、幇助(ほうじょ)したもの。皆殺しだ」
メドベージェフ前大統領の過激発言は、今に始まったことではない。ウクライナ情勢で何かと核兵器の使用をちらつかせるのは、すでに同氏の十八番になりつつある。
今年初めには北方領土問題に絡み、「日本人の感情など知ったことではない」「悲しいサムライなら切腹でもしろ」などと挑発。ご丁寧に切腹の画像まで添えた上で、いささか外交儀礼に欠く発言も積極的に行なっている。
Japan’s Prime Minister Kishinda has once again spoken in favour of a peace treaty with Russia. Surely, on condition of discussing the Kurils and maintaining the sanctions.
— Dmitry Medvedev (@MedvedevRussiaE) January 30, 2024
Well, nobody’s against the peace treaty on the understanding that:
1. The “territorial question” is closed… pic.twitter.com/nC52MzyEU9