平成30年(2018年)7月の豪雨は西日本に大きな被害をもたらした(写真:三田崇博/アフロ)

 気象災害から命を守るための「防災気象情報」が2026年から大きく変わることになりました。現行の情報は用語や危険度レベルに統一性がないことなどから、直感的にわかりにくいという声が途切れず、専門家からも「複雑怪奇」という声が出ていたほどです。

 例えば土砂災害に限っても「大雨特別警報(土砂災害)」「土砂災害警戒情報」「大雨警報(土砂災害)」などの種類があり、高齢者の住民らを戸惑わせていました。これを是正するため、気象庁と国土交通省は専門家による検討会を設置し、議論を重ねていました。最終的にはどんな方針を示したのでしょうか。豪雨が起きやすい夏場を前に、専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。

フロントラインプレス

甚大な被害を出した「平成30年7月豪雨」

 近年の日本は大きな水害がたびたび起きるようになりました。とくに被害が大きかったのは2018年6月28日〜7月8日に発生した「平成30年7月豪雨」です。

 活発な前線や台風7号の影響により、この期間に四国地方で1800ミリという過去に例のない雨量を記録。九州北部や中国、近畿、東海など多くの観測地点で24、48、72時間降水量の値が観測史上第1位となる凄まじさでした。

 気象庁は中国地方や九州北部を中心に1府10県で「特別警報」を発表して最大限の警戒を呼び掛けましたが、河川の氾濫、浸水害、土砂災害などが各地で発生しました。

 最終的には死者224人、行方不明者8人、負傷者459人を出したほか、深刻な住宅被害も出ました。消防庁によると、全壊は6758棟に達し、半壊・一部破損も1万5000棟近く。床上・床下浸水は3万棟を超えるほどでした。

 この大水害では、情報伝達が適切だったかどうかも大きな課題として残りました。甚大な被害を出した岡山県倉敷市真備町などでは、河川の氾濫情報が的確に伝わっておらず、被害の拡大を招いたのではないかと指摘されたのです。

 防災情報は観測機器や情報伝達システムの革新などに伴い、これまでに何度も改定されてきましたが、平成30年7月豪雨の教訓をもとにして、直感的に危険度を判断できる情報発信のあり方を本格的に見直していくことになったのです。