2026年からどう変わる?

 検討会の議論は「シンプルでわかりやすい防災気象情報」「受け手側の立場にたった情報の構築」を眼目としていました。現行の防災気象情報は何度も改正を重ねてきた、いわば建て増しを続けた家屋のようなものでした。そのわかりにくさは、どう解消されるのでしょうか。

 検討会が示した最終の取りまとめ「防災気象情報の体系整理と最適な活用に向けて」によると、新たな防災気象情報は以下のように整理されます。

▼「氾濫」「大雨による浸水」「土砂災害」「高潮」の4つの災害について、それぞれ5段階の警戒レベル(数字が大きいほど危険度は高い)で示す。

▼現在の「特別警報」と「警報」の間に「危険警報」を新設し、レベル5を「特別警報」、レベル4を「危険警報」、レベル3を「警報」、レベル2を「注意報」とする。レベル1に対応する警報や注意報はない。

「洪水」「大雨」「土砂災害」「高潮」の4カテゴリで、警戒レベルは4段階に整理されます。全部で16。したがって、住民は「4段階・16通り」の情報を理解すればよいことになります。また、レベルごとに「特別警戒情報」「危険警報」「警報」「注意報」と用語も統一。レベルごとのカラーも定め、視覚的にも瞬時の判断を助ける仕組みとなります。

出所:国の「防災気象情報に関する検討会」資料からフロントラインプレス作成
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 検討会の最終取りまとめでは、「気象情報」の改革案を示されました。極端な大雨などが予想される場合、気象庁は現在、「顕著な大雨に関する気象情報」「記録的短時間大雨情報」などを出していますが、これらは、極端な現象を速報する「気象防災速報」とその時々の気象状況や見通しを網羅的に伝える「気象解説情報」に区分し、利用者が明確に区別して理解できるように整理します。

 国土交通省や気象庁は今後も細部の調整を続け、2026年の春には運用を始めたい方針です。もちろん、情報提供がシンプルになり、わかりやすくなったとしても、それだけで被害が減るわけではありません。避難路の確認や緊急時の連絡方法、防災グッズの確保、いざというときに備える訓練などは決して欠かすことはできないでしょう。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。