事件に関するニュースで「トクリュウ」という言葉を耳にする機会が増えてきました。トクリュウとは「匿名・流動型犯罪グループ」のことで、SNSを通じて離合集散を繰り返す犯罪グループのことを指します。
2022年から2023年にかけて東京都内や広島県などで強盗・強盗殺人などを引き起こした「ルフィ事件」が、トクリュウの代表的なケースとされています。最近では700億円にも上る資金洗浄(マネーロンダリング)をしたとして摘発された事件にも、トクリュウが関わっていたとされます。
SNS時代特有の、従来とは全く違うスタイルの犯罪とは、どのようなものでしょうか。「トクリュウ」をやさしく解説します。
「闇バイト」が社会問題に
1年ほど前の2023年7月、全国各都道府県の警察本部長を集めた会議で、警察庁の露木康浩長官が訓示に立ちました。露木長官は「闇バイト」で実行犯を募る事件など、従来は見られなかった犯罪が増えていることに言及。「SNSで実行犯を募集する手口は特殊詐欺のみならず、窃盗や強盗・殺人にまで拡大し、社会に大きな不安を与えている」と述べ、新手の犯罪に対して警察組織の見直しなどを図る必要性を強調しました。
SNSでつながり、離合集散を繰り返す犯罪グループ。これを「匿名・流動型犯罪グループ」と定義し、日本警察として本格的に摘発に乗りだすことを宣言したのです。
このときに出された警察庁の通達によると、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)については、次のような認識が示されています。
「近年、暴力団とは異なり、SNSを通じるなどした緩やかな結びつきで離合集散を繰り返す犯罪グループが特殊詐欺等を広域的に敢行するなどの状況がみられる。また、犯罪グループが、匿名性の高い通信手段等を活用しながら役割を細分化したり、犯罪によって得た収益を元手に各種の事業活動に進出したりするなど、その活動実態を匿名化・秘匿化する実態もみられる」
そのうえで、トクリュウ対策を強化するため、各都道府県警察に専従捜査体制をつくることを求めました。現在、準暴力団として把握されていない者を含め、こうした犯罪グループの情報を余すことなく把握し、実効的な捜査体制を作り上げることを求めたのです。通達にはお役所的な言葉が並んでいますが、新組織の構築に言及するなど内容は相当に踏み込んだものであり、トクリュウ対策への並々ならぬ意欲を示すものでした。