匿名性の高いSNSが捜査の壁に

 匿名性の高い通信アプリの存在も捜査の前に立ちはだかっています。ルフィ事件の指示役らが使っていたのは、メッセージを送信すると消えてしまう「テレグラム」。ウクライナ戦争でウクライナ軍が使ったことなどで知られています。また、米国による大量監視の実態を告発したエドワード・スノーデン氏(ロシアに亡命)が使っていたことで有名になった通信アプリ「シグナル」も、トクリュウが使っていたと言われています。

 スマートフォンを押収しても、消えてしまったメッセージの復元は極めて困難とされ、犯罪摘発に不可欠な物証をなかなか入手できないのです。さらに、トクリュウに関与する人物は、海外に住んでいることが少なくありません。

 グループの幹部はホテルで優雅に暮らしつつ、日本に指示の電話をかける「かけ子」らは自分の周囲に住まわせ、監視下において自在に使っているわけです。こうした場合、相手国の捜査機関の協力が欠かせませんが、日本との関係の深さなどにより、それぞれ国の対応には温度差があるのも事実です。

 警察庁の露木長官は「(ルフィ事件は)これまでの組織犯罪対策のあり方を根本から転換させるほどのインパクトがある。治安上の重大な脅威だ」と強い危機感を示し、トクリュウ対策をけん引しています。その成果が目に見えて現れるのは、いつのことでしょうか。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。