組織が強固な暴力団、離合集散を繰り返すトクリュウ

 従来の組織型犯罪と言えば、暴力団が中心でした。暴力団は事務所を構え、構成員は名刺も持ち歩き、繁華街や関係者の間では暴力団員であることを誇っているケースも珍しくありません。“縄張り”も比較的明確で、地域社会と交流のある組織も存在していました。

 しかし、1992年に施行された暴力団対策法や各地で活発になった暴力団排除の運動などによって、暴力団の勢力は次第に低下しました。警察庁の資料によると、暴力団員・準構成員の数は1992年の9万6000人から2023年には2万人にまで減少しています。この間、元暴力団員らの社会復帰も大きな課題となりました。

 一方、暴力団の衰退とともに目立ってきたのが、匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」です。彼らは匿名性の強いSNSを利用して連絡を取り合い、犯行のときだけ顔を合わせるケースも少なくありません。犯行ごとに離合集散するのも特徴です。

 したがって、グループの中心は誰なのか、指示系統や規模はどうなっているのか、犯行で得た収益は最終的にどうなっているのかなど、捜査機関による実態把握は困難を極めるとされています。グループの中心メンバーが海外にいることも多いうえ、末端の実行役は高額の「闇バイト」に釣られてその時だけ現場に足を運んできたというケースも少なくないのです。

 実際、2023年に「指示役」らが起訴されたルフィ事件はそれを地で行くものでした。