「日本を守りたい。国民を守りたい。地方を守りたい――」。自民党総裁選の決選投票を前にした最後の演説で、石破茂氏はそう述べた。鳥取県出身、第2次安倍政権で初代の地方創生担当相を務めた石破氏が、地方に対して並々ならぬ思いを持っているのは明らかだろう。そんな石破氏と、鳥取県の活性化に向けてともに動いたのが、元鳥取県知事の片山善博氏だ。東京一極集中のトレンドが一向に変えられぬ中、石破新政権に何を期待するか。片山氏に聞いた。
石破新政権に求める「地方創生はもうやめて」
――自民党の新総裁が石破氏に決まりました。
片山善博氏(以下、片山氏):石破さんも私も、お互い20代のころから接点があります。私が鳥取県知事のときもよくやりとりをさせていただきました。
政治家ではありますが、私は石破さんにだまされたということが1回もない。本当に誠実な人です。仕事に対して非常にまじめで、ウソを言いません。
そんな性格だから、お金と国会議員からの人気がないんですよ…。そういう人です。
――地方創生においては、第2次安倍政権下で初代の担当大臣を務めました。
片山氏:ご本人が鳥取県という地方の中の地方出身ですから、非常に真摯に考えていらっしゃいます。ただ、やっぱり安倍政権の中での担当大臣だったので、おのずと制約があるんですよね。
早く成果を出さなきゃいけない。仲間である官僚もみんな官邸の方を向いている。自分の思いがなかなか浸透させられないという、そんなやりにくさはあったと思います。
今回、総理となればまた違ってくるでしょう。自分の政策をもっと浸透させていくということはできるんじゃないかと思います。
――やはり、いち担当大臣と総理官邸に鎮座するというのでは振るえる力が違いますか?
片山氏:違います。それに、いち担当大臣ということのみならず、あのときは安倍さんが石破さんをライバル視していましたから。
官僚も、そういう状況をじっと見ています。石破さんの言うことを聞くよりは、官邸にお伺いを立てた方がいいなとなってしまう。気の毒な状況ではあったと思います。
自分がトップに立って、伸び伸びと仕事ができるんじゃないでしょうか。
――片山さんが知事時代、石破さんとの仕事で印象的だったことはありますか?
片山氏:一緒に県内の地域をめぐりましたね。地域の集落なんかから、知事と石破さんの話を聞きたいという意見が寄せられたので、よく一緒に出向いていきました。
地域づくりにおいては石破さんも私も、地域の力を発揮させるということを非常に重視しています。役所がなんぼ動いたって、笛吹けど踊らず。地域の人たちが、自分たちの問題として主体的に動かなきゃいけない。そうしなければ地域の問題は前進しないという考え方です。
――地方に対する思い入れが強い石破氏による新政権が誕生します。地方創生においては何を期待しますか?
片山氏:逆説的にはなりますが、石破さんには「地方創生」はもうやめてほしいです。
これまでのように、国が地方自治体を引っ張っていくという形での政策推進はやめていただきたいということです。