「紀州のドン・ファン」野崎幸助氏に笑顔で寄り添う須藤早貴被告(撮影:吉田隆)

「紀州のドン・ファン殺人事件」の判決が12月12日に下される。JBpressでは社会の大きな関心を集めたこの事件と裁判の経過を報じてきたが、その中から、もう一度読みたい記事を選びました。(初出:2024年5月16日)※内容は掲載当時のものです。

 薫風香る5月10日の午後、和歌山城の内堀の直ぐ脇にある和歌山地裁前には60人を超える行列ができていた。彼らの目当ては、2021年4月に逮捕・起訴された「紀州のドン・ファン」こと故・野崎幸助氏の元妻・須藤早貴被告(28)の初公判である。相変わらずドン・ファン事件への関心の高さがうかがえる。

 法廷には地裁で一番大きな部屋が充てられていたが、それでも傍聴は抽選となった。

 メディアの関心も高かった。開廷が午後2時からだったため、この時間に生放送を行っている「ミヤネ屋」(日本テレビ系)や「ゴゴスマ」(TBS系)は地裁前から中継を行うなど、まるで2018年の殺人事件時の騒動を彷彿とさせる放送態勢だった。

殺人事件の初公判日程はまだ決まらず

 ただ、この日の初公判は2018年5月に発生した本命の殺人事件の裁判ではなかった。早貴被告が19歳の時、故郷・札幌でキャバクラ嬢をしていた時に知り合った当時61歳の男性から約3000万円もの大金をだまし取った、という詐欺罪でのものであった。

 その事件を説明する前に、まず紀州のドン・ファン殺人事件のほうから振り返ってみよう。和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助氏(享年77)が自宅2階の寝室で怪死体として発見されたのは18年5月24日の夜10時過ぎのことだった。この時自宅にいたのはその年の2月8日に入籍したばかりの55歳年下の妻・早貴被告(当時22歳)と、田辺市出身で東京・六本木のマンションで暮らしていた60代のKさんであった。

 Kさんは六本木で水商売に手を染めていた頃にドン・ファンと知り合い、同郷という関係もあって、30年ほど前からドン・ファンが東京でしていた貸金業の手伝いをしていた。またドン・ファンの酒類販売会社「アプリコ」の役員にも就いていた。

 さらにちょうどこの頃、Kさんの高齢の父親が田辺市内の病院に入院しており、田辺市で暮らす妹と交代で月の半分は父親の世話をするようになっていた。その際に、野崎氏の身の回りの世話も手伝っているという関係だった。