さて、自宅で亡くなっている状態で発見された野崎氏だったが、検死の結果、体内から大量の覚醒剤が検出された。何者かによって覚醒剤を飲ませた可能性が高まり、警察の捜査が始まった。

「ドン・ファン」野崎幸助氏の葬儀で喪主を務めた、喪服姿の早貴被告(撮影:吉田隆)

 当然、この時に自宅にいた早貴被告とKさんは警察の捜査対象となるが、より疑わしいのは早貴被告の方だった。だが早貴被告が殺人の容疑で逮捕されたのは、事件から約3年後の21年4月のことだった。そして、これまでに何度も指摘してきたことだが、この事件の裁判はまだ始まっていない。

 殺人事件の裁判よりも先に始まったのが、早貴被告が犯したとされる詐欺事件の裁判だった。

札幌時代、キャバクラ嬢をしながら“パパ活”も

 この事件は、殺人事件の捜査をしていた捜査員が札幌時代の早貴被告の行状を洗い出しているうちに見い出したというものである。高卒後に札幌市内の美容学校に通っていた早貴被告は札幌市内のキャバクラでバイトをしており、そこで小金を持っていそうな男性にカネを貢がせる術を磨いたようだ。世にいう“パパ活”のようなもので、若い女性が自分の肉体をエサに年配男性からカネを頂くという行為である。

 早貴被告は2015年から2016年にかけて、「美容学校の高額の機器を故障したので弁償しなければならない」とか「留学費用を立て替えて欲しい」といったウソ話をして、3回にわたって札幌市の男性から自分の口座に、約3000万円を振り込ませた詐欺容疑で立件されていた。もちろんこれは殺人事件の後のことで、世間的にはそれほど注目されていなかった。

 札幌に入った和歌山県警の捜査員たちは、この一件を発掘し、被害を受けた男性に対して被害届を出すように説得したが、当初、男性は自分の恥になるので被害届の提出を渋っていた。しかし、警察から「名前も住所も伏せるから」と説得され、ようやく応じたということだ。