「紀州のドン・ファン殺人事件」の判決が12月12日に下される。JBpressでは社会の大きな関心を集めたこの事件と裁判の経過を報じてきたが、その中から、もう一度読みたい記事を選びました。(初出:2024年5月16日)※内容は掲載当時のものです。
「私は社長を殺してないし覚醒剤も飲ませていない」
驚きの検察側の冒頭陳述だった。「紀州のドン・ファン事件」の初公判で、いったい検察はどのような冒頭陳述を用意しているのか、そして殺人の罪に問われている元妻・須藤早貴被告は黙秘をするのか、この2点に大きな注目が集まっていたが、検察の冒頭陳述はこちらの予想をはるかに超える詳細なものだった。
9月12日に開かれた和歌山地裁での初公判では、和歌山地裁で一番大きな法廷だったが、傍聴希望者が多く抽選となった。
予想されていたことだが、罪状認否で早貴被告は、「私は社長を殺していませんし覚醒剤を飲ませたこともありません」と起訴内容を否認した。
次に検察官による冒頭陳述が始まった。
「裁判員裁判ということで、裁判員に対して懇切丁寧に説明をしようとする検察側の姿勢が見えました。ただ分かりやすくしてあるのですが、事件の登場人物がアルファベットで示されているので、事件を詳細に知らない人にとっては分かりにくい部分が多かったのではないかと感じました」(大手紙・司法担当デスク)
まずは事件をおさらいしていこう。
和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏(享年77)が自宅2階の寝室で怪死体となって発見されたのは2018年5月24日の夜10時過ぎのことだった。発見したのはこの年の2月8日に入籍したばかりの55歳年下の妻・早貴被告(当時22歳)であった。
17年12月10日に早貴被告と知り合った野崎氏は、すぐに彼女と結婚したいと願うようになっていた。2012年に前妻と離婚して子供もいなかった野崎氏はその後はずっと一人で愛犬イブと暮らしており、若い女性との再婚を願っていた。ただ、なかなかその願いが叶うことなく、6人ほどの女性に結婚を申し込んでいたが全員が彼の下を去っていた。