冷戦時代の「軍事同盟」復活

 実は、ロシアのウクライナ侵攻によって北朝鮮には願ってもないロシアによる支援が転がり込んできた形です。

 国連安全保障理事会は2006年以来11回にわたって、北朝鮮の核実験やミサイル発射に対する制裁決議を採択してきました。一部に抜け穴が指摘されるものの、制裁は北朝鮮に経済的困難をもたらしていることは間違いありません。

 それでも核・ミサイル開発をやめないのは、いつ米韓から攻撃を受けるなどして、現在の体制を転覆させられるか分からないという恐れを抱いているからです。ロシアとの間の新条約は、有事の際にロシアの確実な支援が期待できるほか、米韓に対する抑止力ともなり、北朝鮮にとっては心強いものです。

 金総書記は新条約に基づくロシアとの新たな関係を「同盟」と呼びました。プーチン大統領はそう明言しませんでしたが、実際は東西冷戦の時代に存在した旧ソ連と北朝鮮の軍事同盟の復活と見ていいでしょう。

図:フロントラインプレス作成
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 第2次世界大戦後、朝鮮半島は南北で分断され、北朝鮮は共産圏のソ連、韓国は自由主義の米国の後ろ盾でそれぞれ建国を宣言しました。1950年からの朝鮮戦争では、南北朝鮮が大国の支援を受けて激しい戦闘を繰り広げ、現在休戦状態にあります。韓国の人気タレントらが兵役のため芸能活動を休止するのも、まだ戦争が終結せず、徴兵制が敷かれているからです。