ブルガリアの首都ソフィアにあったワンコインのオフィス=2019年撮影(写真:Belish/Shutterstock)
  • 資産運用ブームが日本でも巻き起こり、SNSなどで巧みに勧誘する投資詐欺が広がっている。
  • 仮想通貨に関する投資詐欺はその典型だが、世界規模で40億ドル(約6400億円)以上もの資金を騙し取った「仮想通貨の女王」がFBIに追われている。
  • このほどFBIは情報提供者への報奨金を、それまでの25万ドルから一気に20倍にあたる500万ドル(約8億円)に引き上げた。死亡説なども囁かれるなか、武器密輸業者にも関わっていたとの疑惑も浮上している。

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 米国務省は6月26日、「仮想通貨の女王」と呼ばれ「史上最悪の世界的詐欺事件」の主犯格と見られている女の逮捕につながる情報提供者に対し、最高で500万ドル(約8億円)の報奨金を与えると発表した。容疑者の名は、ルジャ・イグナトヴァ(44)。ブルガリア生まれのドイツ人だ。

 イグナトヴァは偽の暗号資産「ワンコイン」を使い、世界の投資家およそ350万人以上から、2017年までに40億ドル(約6400億円)以上もの金を騙し取った罪に問われている。残念ながら、日本にもワンコインの餌食となった被害者も出ている模様だ*1

*1日本人被害者が語る「仮想通貨の女王」の悪質すぎる手口(FRIDAY DIGITAL)

 イグナトヴァは米国で2017年10月、大規模詐欺容疑で起訴された。その後、ブルガリアの首都ソフィアからギリシャのアテネに渡航したのを最後に忽然と姿を消し、以来行方がわかっていない。

 2022年、イグナトヴァは米連邦捜査局(FBI)最重要指名手配リストのトップ10に加えられた。当初の報奨金は10万ドル。その後25万ドルに上がり、手配されてから2年余りたった今回、その20倍の500万ドルへと大幅に引き上げられた。FBIの手配書には、同容疑者が武装した護衛、または同行者と行動を共にしているとみられ、整形などにより外見を変えている可能性も指摘されている。

出所:FBIの指名手配書
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 現在までに532人の指名手配犯が最重要指名手配リスト入りし、そのうち9割以上の所在が確認されている。イグナトヴァは現在のリストで唯一の女だ。FBIが最重要指名手配のトップ10リストを公開し始めた1950年以来、女はわずか11人しかいない。

 イグナトヴァ以外の女はほとんどが米国人か在米歴などがあり、殺人や誘拐などの凶悪犯罪で手配されている。これに対しイグナトヴァの罪は通信詐欺、電信詐欺、マネーロンダリングなどだ。

 指名手配犯がこのリスト入りするには、犯罪歴の長さに加え、危険度にも基づいているのだという。後述の通り、イグナトヴァの周辺にはブルガリアなどの裏社会との繋がりも指摘されている。