武器密輸業者に関わっていた可能性も

 さらに、BBCが入手した内部文書によれば、ワンコインは投資家から騙し取った金をロンダリングしただけではなく、英国などのダミー会社からの資金も扱っていた。こうした企業の一部は、北朝鮮からイランへの武器密輸に関与していた、ウクライナの武器商人と繋がりがあったという。

 また、2014年、数十億ドルともいわれる金と共にロシアに亡命したという、ウクライナのヤヌコーヴィチ元大統領と関連する団体とも取引があったとされている。

 BBCは、ワンコイン事件は大規模な詐欺事件というだけではなく、武器密輸などにも繋がる闇の深い大事件なのではないかとの疑問を提示している。

 また、番組では、多くを知りすぎてしまったイグナトヴァがブルガリアの裏組織によってすでに洋上で殺害された上に解体され、イオニア海に沈められたという可能性も示唆した。

 一方で、バートレット氏は今回のFBIによる報奨金増額について、いまだイグナトヴァをかくまっている人物らに対するメッセージではないかとも指摘している。イグナトヴァに犯罪組織が関わっていたとしても、忠誠心がそれほど高くないであろう準構成員などに対しては、多額の報奨金が情報提供を行う動機付けになるのではないか、というFBIによる期待だ。

 創設から10年を迎える今年、ワンコインにまつわる深い闇は、ついにその全貌が暴かれることになるのだろうか。

楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。