すでに殺害されたか?

 昨秋、マクアダムさんはイグナトヴァなどを相手取り、ロンドン高等裁判所に集団訴訟を起こす手筈を整えた。英国内のみならず、世界のワンコイン被害者に一刻も早く参加するよう呼びかけている。自身の体験を綴った著書「悪魔のコイン(The Devil’s Coin)」を発表し、ハリウッドで映画化されることも決まっている。

 肝心のイグナトヴァの所在は、FBIの報奨金増額によって明らかになるのだろうか。テクノロジー関連などの調査報道に定評のある英国人ジャーナリストのジェイミー・バートレット氏は2019年、ワンコイン事件を深掘りし、イグナトヴァの足取りを追ったBBCのポッドキャストシリーズ「消えた仮想通貨の女王(The Missing Crypto Queen)」を放送した。

 同番組は放送開始から4カ月で、350万回以上ダウンロードされている。放送の終盤では、イグナトヴァがドイツに潜んでいるのではないかという可能性にも言及していた。

 しかし、先のFBIによる報奨金の大幅増額の発表に先駆け先月放送されたBBCの番組では、イグナトヴァがすでに殺害されているという線も濃厚だと報じている。

 また、元米内国歳入庁(IRS)職員や、犯罪組織と汚職の関連を調べていたブルガリアの農業副大臣など複数の証言を基に、闇の組織と深い繋がりがあると指摘した。「タキ」として知られる、ブルガリアの大物麻薬密売人との関係である。

 ブルガリアにある複数のイグナトヴァ所有の物件が、このタキなる人物に関係する者らによって使用されているという証拠や目撃証言が存在するという。