業務の中で勝手に生成AIを使う従業員が増えている(写真:SObeR 9426/shutterstock)業務の中で勝手に生成AIを使う従業員が増えている(写真:SObeR 9426/shutterstock)
  • 生成AIの活用が進むにつれて、従業員が業務の中で勝手に生成AIを活用するケースが増えている。いわゆる「BYOAI(Bring Your Own AI)である。
  • もっとも、最新の研究によれば、一人ひとり従業員が個々にAIを活用していては、AIによる力は活かせない。
  • 組織の生産性向上を最大化する上で、生成AIをどのように活用すればいいのだろうか。

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

生成AIを「勝手に」使い始めた社員たち

 MicrosoftとLinkedInが共同で「2024年ワークトレンドインデックス年次レポート」を発表した。これはFortune 500企業で働く31か国3万1000人を対象に行った調査の結果をまとめたもので、「AI が仕事だけでなく労働市場全体をどのように変化させているかについて包括的な見解」を示している。

 さまざまな興味深いデータが提示されているのだが、その一つとして、次のような結果が出ている。調査対象者の75%が既に業務においてAIを利用しており、そうしたAIユーザーの78%が独自のAIツールを業務に持ち込んでいるというのだ。

 いわゆる「BYOAI(Bring Your Own AI、従業員が勝手に、あるいは雇用主の許可を得た上で、自前で用意したAIアプリケーションを業務に使用すること)」である。

 レポートではこの結果を「社員はトップからの指導や許可なしに、物事に勝手に対処し、AI を隠れて使用」していると解釈し、「社員は職場でのAI の導入を望んでいるが、企業が対応するまで待つ意思がない」と結論付けている。

「自分にも心当たりがある」と思った方は少なくないのではないだろうか。

 たとえば、同じレポートでは、BYOAIが進む一つの要因として「仕事が社員の対応力よりも速く加速していること」を挙げている。

 調査対象者の68%が仕事のペースと量に苦労しており、46%が燃え尽きを感じていると回答したそうだ。こうしたプレッシャーに対抗する手助けをしてくれるのが、最近の生成AIツールというわけである。

 難しいタスクを任せるのはまだ不可能だが、ちょっとした調べ物やアイデア出し、あるいは文章の要約や翻訳くらいならば、いまの生成AIは難なくこなしてくれる。それで5分でも10分でも空き時間をつくれるなら、自分のスマホに手を伸ばして、会社からは認められていないAIアプリを起動してしまう──。そんな気持ちは痛いほど理解できる(もちろん、会社の安全を管理する立場の人間からすれば悪夢でしかないが)。

 いまやスマホから簡単に生成AIにアクセスできてしまう時代だということを考えれば、こうした事態は防ぎようがない。企業には生成AIを一切禁止するのではなく、自社独自のシステムを構築して社員に提供したり、社内で外部アプリケーションを使用する際のルールをつくったりする対応が求められている。

 そしてもう一つ、生成AIを社内でオープンに受け入れることのメリットが、最新の研究によって明らかになっている。それは生成AIを個人で使うより、チームとして戦略的に使った方がその恩恵を受けやすいというものだ。