2024年7月3日から新しい紙幣の発行が始まります。紙幣のデザインが変わるのは2024年11月以来20年ぶり。新たなお札の顔は、1万円札・渋沢栄一、5千円札・津田梅子、1千円札・北里柴三郎となります。キャッシュレスが急速に進む中での新紙幣にはどんな狙いがあるのでしょうか。新たなお札にはどのような新技術が施されているのでしょうか。やさしく解説します。
20年ごとに「改刷」、前回は偽札が大問題に
新たな紙幣をつくる「改刷」は財務相と日本銀行、国立印刷局などの関係機関が協議し、財務大臣が最終決定することが法令で決まっています。今回の改刷が発表されたのは、2019年4月。当時の麻生太郎財務相は記者会見で、狙いは偽造防止にあると端的に語っています。
「これまでも紙幣は20年ごとに改刷して、偽造への抵抗力を確保してきた。印刷の開始までに2年半くらいかかる。その後、自動販売機などの機械を変えていかなければならない。準備を考えて合計5年の期間が必要だと判断した」
「造幣局では偽造防止について常に取り組んでいる。前回(2004年)の改刷から14年が経過しており、発行するまで通常5年かかると言われている。毎回20年で改刷しているが、たまたま(令和への)改元と合わさった」
1万円・福沢諭吉という現行のお札が発行される直前、2004年の前半、日本各地で偽の1万円札(聖徳太子)が次々と見つかり、大きな問題となっていました。石川県の寺社のさい銭箱、大阪市のレンタルビデオ店、東京都内の書店、福井県内の銀行……。兵庫県の川では偽札がまとまって川底から見つかる騒ぎもありました。
同じ時期、通貨偽造罪・偽造通貨行使罪で多くの人が有罪判決を受けています。その多くは自宅のカラーコピー機を使って偽造紙幣を作っては使用するというものでした。
関東地方で摘発された8人グループの場合、中国人の男らから500枚近い偽造紙幣を入手し、イベント会場や夏祭り、海水浴場、遊園地などお札のチェックが行われにくい場所で使用。やがて仲間割れが起きると、そのうちの1人は自宅のカラーコピー機を使って約220枚の偽札を作り、市中で使っていたとされています。
背景にあるのは、カラーコピー機の性能向上でした。1台数万円程度の家庭用でも、見た目は本物と区別ができないくらいの精巧な偽札をつくることが可能になっていたのです。手触りは本物と違っていたとされていますが、お祭り会場などでは、いちいち確かめることもなかったのかもしれません。