世界初の3Dホログラムを採用

 新紙幣には偽造防止を目的として数々の最新技術が施されています。特に注目すべきは「3Dホログラム」。それぞれの紙幣の表面・左側には人物の小さな肖像や花模様などがあしらわれていますが、角度を変えて眺めると、肖像などの図柄も向きを変えるのです。

 紙幣にこの技術を採用するのは、世界で初めて。また、肖像の周辺には現行紙幣よりもさらに高精細のすき入れ(お札を透かしたときに現れる模様)が施されています。

 紙幣を傾けて見ると、左右の余白部分がピンク色に見える「パールインキ」、カラーコピー機などでは再現が極めて難しい超微細な「マイクロ文字」、紫外線を当てると表面の一部図案が発光する「特殊発光インキ」など、現在の紙幣で採用されている数々の偽造防止技術は、さらに高度化して継続採用されています。

 新しい紙幣の発行は7月3日にスタートします。これに向けて、各金融機関や事業所の対応も急ピッチで進んでいます。

 日本国内には約18万台のATM(現金自動預け払い機)があり、飲料などの自動販売機や両替機といった紙幣に関する機器は400万台近いとされています。これらを新紙幣に対応させる作業は膨大で、コストは総額で5000億円を超えるとの試算もあるほど。両替機の関連メーカーは「特需」への対応を急いでいますが、キャッシュレスが浸透したためか、前回2004年のときほどの盛り上がりはないとも言われています。
 
 新しい紙幣が実際に市民の手に広く行き渡るには3カ月〜半年ほどの期間が必要とされています。前回2004年の改刷では、1年後に市中の紙幣の6割が新紙幣に入れ替わっていました。新紙幣発行後も、過去に発行された日本の紙幣はすべて正当なお金として使うことができます。新紙幣対応の自動販売機などが整うには少し時間も必要なため、一部では不便が生じることもありそうです。

 一方、政府には今回の新紙幣の発行によって、タンス預金として家庭で眠っているお金を吐き出させ、少しでも経済を好転させたいとの狙いもあるようです。円安やインフレが続き、生活防衛の機運が高まる中での新紙幣発行ですが、政府の思惑は果たして狙いどおりになるのでしょうか。

フロントラインプレス
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