最近、おじさんが意外な場所で働く姿を見かける。給料が上がらない。本当に年金もらえるの? AIに仕事を奪われる…! 将来の不安から副業を始める中高年男性が増えているのだ。
おじさんたちはどんな副業をしているのか、どれくらい稼いでいるのか、あるいはまったく稼げていないのか。組織をはみ出し、副業を始める全力おじさんの姿をより深くレポートする。(若月 澪子:フリーライター)
なぜか地下アイドルのマネになったおじさん
東京都知事選の投票日まで、1カ月を切った。
都知事選は「1位じゃなきゃダメなんです。2位じゃダメなんです」。とはいえ有権者から見ると、候補者の面々は個性ばかりが前に出ていて、まるでYouTube祭り。誰に東京の未来、いや実生活を託せばいいのやらである。
そんな東京の地下世界では1年中、選挙活動のようなことをやっている人たちがいる。
「数年前から副業で地下アイドルのマネジャーをやっています」
こう話すDさん(38・既婚)は大手IT企業の営業マン。黒縁眼鏡とぽっちゃり体型はオタ芸をやっていそうな雰囲気だが、本人はまったくアイドルに興味がないという。
「世代的にモー娘。は聴いていましたが、2曲くらいしか知りません。それまで地下アイドルのライブに行ったこともありませんでした」
そんな彼を「地下」へと駆り立てたのは、ホワイトカラーを震え上がらせているアレである。
「AIに仕事を奪われると騒がれ始めた時、これはヤバい、何かやらなきゃと。僕は、営業って仕事はいずれなくなると思っているんですよ」
DさんはYouTubeで稼げないかと頭をひねった。
「僕みたいなおっさんがYouTubeに登場しても誰も見ませんよね。売りになるタレントがいないとダメだと思ったんです」