副業をする中高年男性に取材していて、なかなか出会えない仕事がある。介護や保育などのケア労働だ。定年退職後にケア労働に就きたいというホワイトカラーの中高年男性は、わずか数パーセントしかいないというデータもある。
とはいえ、ケア労働はAIに仕事を奪われにくい分野と言われる。生成AIなどによってオフィスワークが消滅しても、マニュアルが通用しない介護職は自動化されにくい。しかも、定年後も長く働けるうえに、介護は深刻な人手不足──。素人でも取り組める、ケア労働の副業をご紹介しよう。(若月 澪子:フリーライター)
ガイドヘルパーはおいしい副業?
「サラリーマンでもできる介護系の副業と言えば、ガイドへルパーですね。おじさんでもやっている人はいますよ」
そう教えてくれたのが、とあるスポーツライターだった。
「障害者移動支援従事者」(通称「ガイドへルパー」)は、障害がある人のお散歩や外出の支援をする仕事だそうである。
彼のお子さんは自閉症で、週末などにガイドへルパーにお世話になっているという。
◎もしもおじさんが介護を副業にしたら?敏腕スポーツライターが働いた現場はあまりに苛烈だった(JBpress)
「知的障害や精神障害がある子の親は、週末に子どもが外出してくれると助かるんです。自分の足で自由に出かける機会も少ないので、ガイドへルパーに視野を広げてもらえるのはいい。先週末もヘルパーさんが、ウチの子を小田原城まで連れて行ってくれました」
ガイドヘルパーは博物館や映画館に無料で入れる。直行直帰、スキマ時間OK、時給は1200〜1800円程度(東京都内の場合)である。これは、おじさんにもおススメできそうだ。
ただし、ガイドへルパーになるには、自治体などが開催する研修を受けなければならない。仕事をする自治体にもよるが、ガイドする相手が知的障害か視覚障害かなど、障害の種類によって資格も異なる。
筆者は一番費用が安く、3日で取得できるという「知的障害者移動支援従事者養成研修」という資格を取ってみることにした(東京都の場合、受講費用は1~3万円程度。福祉事業所が負担してくれることも)。
そして5月の日曜日、都内で開かれた研修に参加した。その会場の受講者は筆者と20代の若者2人の合計3人。ガイドへルパー、人気なさ過ぎる……。
講師の大林健一さん(仮名)は、都内で知的障害者の福祉事業所を運営し、自身もガイドヘルパー歴20年のベテラン。にこやかでやさしそうな「ザ・福祉の人」だ。
だが、彼が授業で最初に語った話は、いきなりジャブが効いていた。