農作物の収穫は重労働(写真:日本農業新聞/共同通信イメージズ)農作物の収穫は重労働(写真:日本農業新聞/共同通信イメージズ)

 最近、おじさんが意外な場所で働く姿を見かける。給料が上がらない。本当に年金もらえるの? AIに仕事を奪われる…! 将来の不安から副業を始める中高年男性が増えているのだ。おじさんたちはどんな副業をしているのか、どれくらい稼いでいるのか、あるいはまったく稼げていないのか。組織をはみ出し、副業を始める全力おじさんの姿をより深くレポートする。(若月 澪子:フリーライター)

農業もスキマバイトの時代

 人手不足解消のために、スポットワーク(スキマバイト)が広がりを見せる中、農業でもスポットワークで人材を確保しようという流れが生まれている。

 スポットワークは、スマートフォンのアプリを通じて、1日限りの単発バイトに応募する新しい働き方だ。

 タイミー、シェアフル、LINEスキマニなどの求人アプリが知られており、アプリに本人確認書類などを登録すれば、面接や履歴書不要でさまざまな日雇いの仕事に入ることができる。アプリには、飲食店の片付け、コンビニやスーパーなどの品出し、フードデリバリーなど、人手不足の業種の求人がひしめく。

「コロナ禍以来、会社に出社するのは週3日ほど。リモートワークだと家に引きこもりがちになるので体を動かしたかった。農業のスポットワークがあることを知り、興味を持ちました」

 こう話すのは、普段はIT企業で営業マンをしているという埼玉県在住のMさん(47)。埼玉のベッドタウンのマンションに妻と二人で暮らす、シュッとしたイケオジだ。

 Mさんが営業しているのは、企業や個人が使用するWi-Fiのルーター。最近は、海外からのインバウンド客が日本に滞在する際に利用するポケットWi-Fiを、海外の旅行会社などに売り込む機会が多い。とはいえ、海外への営業もほとんどオンラインで済ませている。

 そんなMさんが「農家のお手伝い」という副業に初めて取り組んだのは、半年ほど前のこと。

「以前からタイミーなどスポットワークのアプリを見ていたのですが、コンビニのレジとか、運送会社の荷物の仕分け作業には惹かれなかった。農業は自然の中で自由にできるイメージで、楽しそうだと思いました」

 農業にそこはかとなくアコガレを抱くおじさんは多い。Mさん自身も「いつか農業をやりたい」と漠然と思っていた中年の一人だった。