
(萩原詩子:編集者・ライター)
X(旧Twitter)、Instagram、Googleフォームでだれでも投票できる建築アワード「みんなの建築大賞 2025」の投票が始まった。投票期間は2025年1月27日から2月5日まで(詳しい投票方法は記事末で説明)。前回(2024)はXだけだった投票方法に、今回InstagramとGoogleフォームが加わり、より参加しやすくなった。
「みんなの建築大賞」は「世界に誇る日本の魅力的な建築の数々を、広く一般の人に知ってもらいたい!」と願う自発的な「推薦委員会」により、2024年に創設された。今年が2回目の開催となる。賞の対象は、2024年中に完成・開業、または雑誌などで公表された国内の建築だ。
この賞の特徴は、「建築のつくり手」ではなく、「建築を伝える」立場のプロたち(推薦委員会)が候補作を選び、広く一般から投票を募って大賞を決める点にある。
推薦委員会は、建築・インテリア系メディアの編集者や建築史家などで構成される。委員長は前回に続き、建築史家で東北大学教授の五十嵐太郎氏だ。総勢31人の委員がおのおの3作品までの「推し」を推薦。これをもとに2025年1月14日に選定会議を開催し、「この建築がすごいベスト10」を選定した。
31人が推した候補作は、昨年の43作品を上回る51作品に上る。このうち、多くの推薦を集めた上位3作品は自動的にベスト10に決定。4位以下は票が割れ、挙手による投票を繰り返した末にようやく決まった。なお、ベスト10にランキングは設けていない。以下、どんな作品が選ばれたのかを見ていこう。
同じ場所で2作品がノミネート
ベスト10のうち東京都内の作品は2作品で、それも同じ場所に位置するという珍しい結果になった(謎解きはのちほど)。ほか、愛知と大阪が2作品ずつ、新潟、静岡、京都、熊本が1作品ずつと、全国に分散している。今年は去年より規模の大きな作品が多く、半数は公共施設だ。
東京のノミネート作は「ポーラ青山ビルディング」と、ビルの足元に移築された文化財住宅「土浦亀城邸」とのセットが1つ。さらに同じビル内に開設された「まちの保育園 南青山」も、単独作品としてベスト10入りした。1つの場所に、新旧さまざまな要素が詰まっている。
青山通りに面した「ポーラ青山ビルディング」は地下2階地上16階建てのオフィスビル。大きな特徴は、ファサード(建物前面)に大きな凹みをつくり「街の床の間」に見立てていることだ。この「床の間」の上部(地上30m!)には、現代美術ユニットSHIMURAbros(シムラブロス)による巨大なアートワークが浮かぶ。さらに、ビルの足元にも、同じ作家のシリーズ作品が配置されている。

ビルとセットでノミネートされた「土浦亀城邸」は、青山通りとは反対側のビル南側の公開空地にある。戦前(1935年)に建てられた建築家夫妻の自邸で、知る人ぞ知るモダニズム建築の傑作だ。1995年には東京都の有形文化財に指定されている。
夫妻の逝去後、保存策が模索されていたが、詳細な調査・考証のもとに移築が実現。竣工当時の間取りやインテリアを復原した。現在は月に2日のガイドツアーで公開されており、予約が殺到している。
