愛知は2作、博物館とジブリパーク

「豊田市博物館」は、昨年(みんなの建築大賞2024)も「SHIMOSE(下瀬美術館)」でベスト10入りした世界的建築家・坂茂氏の設計だ。ちなみに下瀬美術館は、2024年のユネスコ「世界で最も美しい美術館」で最優秀賞に輝いた。

「豊田市博物館」は、昨年暮れに逝去した美術館建築の名手・谷口吉生氏による「豊田市美術館」(1995年)に隣接しており、両館が連続するようにランドスケープをデザインし直している。ガラスと金属の美術館に対し、博物館は木をふんだんに使った架構が特徴だ。その梁のパターンは、豊田市の市章を模しているという。

「豊田市博物館」。木の架構の大屋根が内外をつなぐ。ガラス張りの部分は「えんにち空間」と名付けられ、様々なイベントや展示が行われる。設計/坂茂建築設計(写真:前田智成)「豊田市博物館」。木の架構の大屋根が内外をつなぐ。ガラス張りの部分は「えんにち空間」と名付けられ、様々なイベントや展示が行われる。設計/坂茂建築設計(写真:前田智成)

「豊田市博物館」と同じ愛知県内にあり、愛知環状鉄道と「リニモ」を乗り継いで1時間弱で行き来できるのが「ジブリパーク」。ただしチケットは事前予約制なので注意が必要だ。

 敷地は「愛・地球博記念公園」の中にあり、5つのエリアに分かれている。今回のベスト10の対象は、2024年3月に開園した「魔女の谷」だ。「魔女の宅急便」や「ハウルの動く城」といった魔女と魔法にまつわる作品をイメージしている。あの「ハウルの城」が現実の建物として目の前に立ち現れると思えば、ワクワクする人も多いのでは。

 ほか「グーチョキパン屋」「魔女の家」など映画の建物が再現され、異なる作品同士をオリジナルの建造物で違和感なくつないでいる。プラスチックの成形は用いず、すべて実際の建材を使って、映画には描かれていない細部までつくりこんでいる。

「ジブリパーク 魔女の谷」にある「ハウルの城」。複雑極まる形状をホンモノの建築として成立させた。もちろん屋内にも作品世界が展開する。設計/スタジオジブリ(デザイン監修)、日本設計(写真:ロンロ・ボナペティ)「ジブリパーク 魔女の谷」にある「ハウルの城」。複雑極まる形状をホンモノの建築として成立させた。もちろん屋内にも作品世界が展開する。設計/スタジオジブリ(デザイン監修)、日本設計(写真:ロンロ・ボナペティ)