台湾TSMCの子会社JASM熊本工場=2024年4月撮影(写真:松尾/アフロ)

(井上 久男:ジャーナリスト)

 半導体受託製造で世界最大手である台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が、熊本・菊陽町に新設した工場で昨年末に量産を開始した。TSMCの協力企業で、半導体製造の後工程である封止・検査で世界最大手のASE(日月光投資控股)も、北九州市内に工場を建設することを内定している。

 台湾の半導体関連企業はさらに北部九州への進出を目論んでいるとの情報もあるが、大きな課題の一つが日本国内での労働力の確保だ。TSMCがある熊本県内では人材の争奪戦が起こっていると言われる。北部九州では福岡市は人口増加が続くものの、総じて少子高齢化が進み、働き盛りの人材を獲得しづらい状況にある。

 こうした中、九州共立大学(北九州市)がユニークな取り組みを始めようとしている。大学4年間のうち、九州共立大で2年間学んだ後、残り2年間は台湾の名門私学である銘伝大学に留学し、そこで英語、中国語を学ぶと同時に半導体企業での実習も行う。帰国後は希望者を積極的にASEの日本法人が採用するという日台の大学が連携したグローバルな人材育成制度を2026年度にも開始する計画だ。

 卒業証書は銘伝大学が出すが、九州共立大でも出すことを検討しており、「ダブルディグリー」とする可能性がある。昨年12月、九州共立大と銘伝大が友好交流協定を締結し、計画を進めている。

 日本政府は経済安全保障上の観点から半導体の国内生産基盤を強化するため、TSMCに対し1兆円を超える補助金を出している。TSMCは熊本・菊陽町に昨年末に稼働した第一工場に加え、同町内に第二工場を建設する。こうした動きに合わせて協力企業も日本進出を目論むが、人材確保は大きな課題となっている。

 日台でグローバル人材育成構想があると聞いて筆者は、銘伝大を訪問し、担当の劉國偉教授に話を聞いた。