福岡県豊前市、コロナ禍で台湾に急接近

 人口減少が進む中、台湾など海外からの人材を「市民」として受け入れ、義務教育など行政サービスを提供し、しっかり働いてもらい、税金も納めてもらいたい考えだ。日本政府は建前として移民政策はとらない考えだが、現実を見ると技能実習などの名目でこれまでなし崩し的に主に単純労働の世界で外国人労働者を受け入れてきた。

 こうした現実を受け止め、豊前市は今後、単純労働というよりもむしろ付加価値の高い仕事を担える外国人を受け入れていきたいとの考えの下、その準備も進めている。地域経済、ひいては日本経済に貢献する外国人を受け入れる時代が来ているのではないか。

 元警察庁長官である國松孝次氏が会長を務め、有識者が集まる「一般財団法人 未来を創る財団」では、「地域おこしと外国人受け入れ」について前向きな提言をしている。

 実は筆者は豊前市出身であり、高校生の頃までそこで育った。そのご縁により、同市政策アドバイザーを無報酬・非常勤で務めており、産業誘致の視点などについて後藤氏に助言している。

台北市内のイベントで挨拶する豊前市の後藤元秀市長(右から2人目)と、台湾外交部亜東太平洋司の陳忠正首席総領事(左)ら関係者。陳氏は、領事館に当たる台北駐福岡経済文化弁事処長を経て現職にある(写真:筆者撮影=2024年7月)

 豊前市が台湾との友好関係を推進する契機となったのがコロナ禍だった。豊前市議会が20年、九州の自治体ではいち早く、台湾のWHO(世界保健機関)へのオブザーバー参加を認めるべきだとの意見書を採択したことで、台湾側が恩義に感じてくれ、友好関係が一気に深まった。昨年5月に執り行われた台湾の頼清徳総統の就任式に後藤氏は地方自治体の首長ながら招かれる関係にまでなった。

 TSMCなどの大企業だけではなく、台湾の中小企業の中にも最近は日本進出を狙っているところが多いと言われる。豊前市には広大な工業用地は今のところないし、工業用水も潤沢ではないため、TSMCのような巨大企業を受け入れることはできないのが現状だ。このため、台湾の政官財とも太いパイプを構築している後藤氏は台湾の中小企業誘致に目を付けた。