
(井上 久男:ジャーナリスト)
日産自動車の内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)が退任する見通しになった。当面後任は置かず、現CFO(最高財務責任者)であるジェレミー・パパン氏が暫定CEOに就く方向で最終調整している。
3月6日に開催予定の指名委員会で、内田氏の退任を決める見通し。日産の指名委員は次の5人。委員長が社外取締役のアンドリュー・ハウス氏(ソニー出身)、同・監査委員会委員長の永井素夫氏(みずほ信託銀行元副社長)、同・取締役会議長の木村康氏(ENEOSホールディングス名誉顧問)、同・報酬委員会委員長の井原慶子氏(慶応義塾大学大学院特任教授)、ルノー会長のジャンドミニク・スナール氏。
関係者によると、2月13日に発表したホンダとの経営統合交渉の破談を受けて、日産の社外取締役の中では内田氏の経営責任を問う声が強まっているという。さらに、交渉を支援してきたメインバンクのみずほ銀行は、日産が組む相手はホンダしかないと考えており、再交渉すべきだとの考えのようだ。みずほ銀行は日産に巨額の資金を融資している。
こうした中、みずほ銀行と関係が深い永井氏が中心となって、内田氏に退任を迫っているという。現状では指名委員会の大勢は、内田氏の続投を認めない方向のようだ。
指名委員5人のうち、永井氏と木村氏は、2月13日の取締役会でホンダとの交渉破談に反対票を投じており、内田氏の判断に疑問を持っていると見られる。また、「テスラなどホンダとは別の企業と日産を結び付けようとしている社外取締役は、内田氏に代わる社長候補を探している」(日産関係者)とも言われており、内田氏に対する包囲網ができている。
内田氏退任後、暫定CEOがホンダに対して再交渉の提案をすることが検討されている模様だ。日産社内には、今の厳しい経営状況を考えれば会社の生き残りを優先すべきで、共同持ち株会社や子会社といった形態にこだわるべきではないとの声も少なくない。