スズキ「ジムニーノマド」スズキ「ジムニーノマド」(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)
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 スズキ「ジムニー」シリーズ初の5ドアモデル、ジムニーノマドがついに日本でもお披露目された。プロフェッショナルツールとして細々と作られてきたジムニーが2018年発売の第4世代で突如大ブレイクした流れを一層加速させることになりそうだが、月1200台どまりという供給力不足などの懸念も残る。果たしてジムニーノマドはスズキブランドをどう発展させるのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。

日本市場への投入時期がインドデビューから2年後だったワケ

 1月30日、スズキは小型クロスカントリー4×4「ジムニーノマド」を発表した(発売は4月3日)。

 ジムニーノマドは2018年に発売した現行世代の「ジムニーシエラ」をベースに車体、ホイールベースを34cm延長し、3ドアから5ドアに改修したモデルだ。単に後席の足元空間を広げただけでなく、後席座面を2cm高めて眺望を含めた居住感の改善を図るなど、本格的な4名乗車を志向した作りとなっている。

 ノマドは遊牧民の意で、90年代にスズキが販売していたクロスカントリー4×4「エスクード」の5ドアモデルに付けられたサブネーム。鈴木俊宏社長の意向でその名称を復活させた。

ジムニーノマドの発表会で説明するスズキの鈴木俊宏社長(2025年1月30日)ジムニーノマドの発表会で説明するスズキの鈴木俊宏社長(2025年1月30日、筆者撮影)

 居住区と並んで荷室も拡張された。ジムニーシエラの荷室は後席シートバックを立てた状態では奥行きが20cmくらいしかなく、置けるのは手荷物くらいのものだったが、ジムニーノマドは容量211リットルと、4名乗車でも十分な荷物を積めるようになった。

 グローバル市場ではジムニーの5ドアロングは目新しいものではない。生産国であるインドではすでに2年前の2023年1月にリリースされていた。その後販路を東南アジア、中南米、アフリカ、中近東と世界に広げ、日本への導入は101カ国目であるという。

 情報化が進んだ現代では海外の動向も簡単に知ることができる。5ドアの存在はインド発売前年の2022年には海外メディアが続々とスクープを飛ばしており、それを知ったファンから発売を熱望する声が沸き起こっていた。

 にもかかわらず日本市場への投入時期がインドデビューから2年後というタイミングになったのはなぜか。鈴木俊宏社長は軽自動車の「ジムニー」、普通車3ドアのジムニーシエラの生産が受注に追い付かず、年単位の待ちが発生している中で同じシリーズの新商品を投入するのがためらわれたことを理由として挙げた。

 スズキがジムニーノマドのリリースに踏み切った背景には、ジムニーシリーズへの需要を分散させるという意図もある。メディア向け発表会ではジムニー、ジムニーシエラを注文した顧客が希望すればジムニーノマドへの変更も受け付ける方針であることが正式に表明された。

 もっとも、分散策についてはあまりうまく機能するとは思えない。ジムニー5ドアを写真で見た段階では幅と高さはそのままにホイールベースを大幅に延長したことで間延びしたプロポーションになっているような印象を受けたが、会場で実車を見ると、大変均整の取れたフォルムだった。

スズキ「ジムニーシエラ」現行の「ジムニーシエラ」(筆者撮影)