ボルボXC60のフロントビュー(筆者撮影)
(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)
日本で失速するボルボ、電動化先進ブランドが直面した「需要の逆風」
日本の輸入車市場でここ10年の間に急激にプレゼンスを上げたスウェーデンの小規模自動車メーカー、ボルボ(Volvo)が日本市場で苦戦を強いられている。
2019年には年間1万8500台を販売していたが、今年2025年は11月までの時点で1万314台と、2011年以来の低水準。“非ジャーマン系ブランド首位”という立ち位置は堅持しているものの、ボルボとしては甚だ不本意なスコアであろう。
ボルボの直近の電動化比率はBEV(バッテリー式電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッドカー)を合わせて5割強と、電動車専業メーカーを除くとトップクラスだけに、当然昨今の電動車需要の停滞の影響は強く受けるはずだが、グローバル市場でのパフォーマンスはそれほど悪くない。
1~11月の販売台数は同社史上最高となった昨年の同時期と比べると8%ほどのマイナスだが、史上2番目だった一昨年の同時期は上回っている。
そんな中で日本市場でのセールスが大きく落ち込んでいるのは、BEVカテゴリーの需要の弱さだ。販売台数に大いに貢献したディーゼルエンジン搭載モデルが電動化推進の一環で消滅したが、その減少分をBEVでカバーするには至らなかった。
世界販売70万台クラスのボルボにとって、1万台クラスの日本市場は決して大きくはないが失ってもかまわないというものではない。今の流れは是が非でも反転させたいところだろう。果たしてボルボにその目があるのか。
競合する欧州プレミアムブランドからは、販売減とは裏腹に侮れないという声が聞かれる。東京東部のメルセデスベンツ販売店関係者は、こう話す。
「ボルボさんの日本での販売の歴史は長いですが、昔はウチと直接競合することはまずありませんでした。ところが10年ほど前に(大型SUVの)『XC90』がリニューアルされた頃から状況が変わってきました。
高性能志向のお客さまが流れるようなことはないものの、上質なクルマに気軽に乗りたいというニーズに関しては防衛を意識しなければならなくなりました。私も乗ってみましたが、昔と違ってクルマに乗り込んだ瞬間からちゃんとプレミアムカーになっています。台数を減らしているようですが、高所得者層へのブランド浸透はむしろ強固になっていると思います」
