「ミラーサイクル化」で向上した実燃費の中身
ビジュアル的にもライドフィール的にもおっとりテイストのXC60。運転も自然と大人しいものになるが、スロットルを深く踏み込んだときの加速はそのイメージよりはずっと強力だった。
2リットル直列4気筒ターボエンジンは最高出力が250馬力と、1930kgの重量級ボディに対しても十分な能力を持つ。山岳路の急登、高速道路の登り勾配の流入路など負荷が大きいところでも狙った車速にまで素早く引き上げられるという印象だった。
ボルボXC60のリアビュー(筆者撮影)
エンジン回転数が上がっていないときの柔軟性も十分で、結構な加速を必要とするときも大抵は2000rpm台で事足りた。今回は新東名や東北自動車道など制限速度の緩い区間を走っていないが、そういう区間でも低い回転数のまま余裕で最も速い流れに乗ることができそうに思えた。
あまりにエンジンを回す機会が少なかったため、帰路に越後湯沢から高速に乗る時に全開加速を試してみたが、合流車線がまだまだたっぷり余っている地点で制限速度を軽々と超えそうな勢い。自然吸気エンジンでいえば3~3.5リットルエンジンくらいの余裕である。
変速機は日本のアイシンAW社との共同開発による8速AT。変速ショックがほとんど感じられないくらい小さいうえ、変速後に迅速にロックアップがきくためダイレクト感も良好だった。
センターコンソールのATシフトレバーはスウェーデンのオレフォス社のクリスタルグラス(筆者撮影)
燃費は現行XC60の初期型はもちろんのこと、2020年に投入された第1世代マイルドハイブリッドと比べても長足の進歩を遂げていた。
従来型のエンジンが負荷が軽いときに4気筒のうち2気筒のバルブを閉じたままにして空気の吸い込みロスを減らす気筒休止システムで燃費を向上させようとしていたのに対し、ビッグマイナーモデルのエンジンは空気を少なく吸って大きく膨張させることで効率を改善するミラーサイクルというタイプになった。
国土交通省のWLTCモード審査値は旧タイプの12.2km/リットルから12.8km/リットルと、5%程度の向上にとどまるが、実際にドライブしてみるとミラーサイクル化の効果は顕著。同じ条件で走ったわけではないのでエビデンスのある比較ではないが、遠乗りでは体感的にも数値的にも2割近く現行型が向上しているという印象だった。
ドライブを通じたオーバーオールの燃費は16.6km/リットル。こまめに給油して区間燃費を正確に測ったわけではないので参考に燃費計値を記すと、
①東京出発後、標高約1400mの安房トンネルを超えて富山市に至った381.9km区間(平均車速66km/h)が17.2km/リットル
②富山市を起点に能登半島先端の禄剛埼や輪島などを巡って富山市に帰着した397.2km区間(平均車速47km/h)が15.3km/リットル
③富山市から親不知、直江津と日本海沿岸を走り、そこから越後湯沢方面に内陸をショートカット、湯沢インターから埼玉・草加市まで高速道路で移動した406.0km区間(平均車速63km/h)が17.8km/リットル
ちなみに第3区間では関越道湯沢インターから外環道草加インターまで、高速オンリーの走行距離と燃費値の変化を記録しておいた。その数値から燃料消費量の概算を割り出して区間燃費を計算してみたところ、20.9km/リットルとなった。
マイルドハイブリッドとミラーサイクルの合わせ技により、少なくともロングランにおいてはディーゼルと同等とまではいかずとも、それに近い燃費を出せるまでにはなったというところだ。