“大船に乗った感”のある快適クルーズが改良版XC60の真骨頂
ボルボは今年、中核モデルの中型SUV「XC60」の大規模改良を行った。2017年の日本市場投入から丸8年という長寿モデルだが、エンジンを熱効率の高いミラーサイクルに変更、静粛性の向上、Googleアシスタント採用、インターネットを介したソフトウェアアップデート機能実装など、広範にわたって改良を施したという。
果たしてプレミアムセグメントのモデルとしてどのくらいの戦闘力を有しているのか、1200kmほどテストドライブを行ってみた。
テスト車両は最高出力250馬力のエンジンに小型の電気モーターを組み合わせたマイルドハイブリッドの上級グレード「Ultra B5 AWD」で、消費税込みの車両本体価格は879万円。ルートは東京を起点に飛騨高山、能登半島を巡り、三国山脈を越えて帰還するという北陸紀行で、総走行距離は1220.1km。道路比率は市街地2、無料の自動車専用道を含む郊外路4、高速4。エアコン常時オート。
ボルボXC60のサイドビュー(筆者撮影)
ではレビューに入っていこう。プレミアムセグメントにおいて「D-SUV」と呼ばれる中型SUVは最大の激戦区であり、どのブランドもクルマの作り込みからハイテク実装に至るまで、総力戦でかかってきている。そんな中でXC60の金看板と感じられたのは独特のリラクゼーションだった。
静粛性はXC60がフルモデルチェンジで現行型となった頃と比較して格段に高くなり、乗り心地は良好。窓が広大で眺望と採光性に優れ、開放感はクラス随一だ。走行性能は十分以上に高いが、ドライビングプレジャーを意識させるような刺激的な演出は希薄で、険しい山岳路や路面の荒れた場所でのストレス、疲労を軽減させるためにクルマが縁の下の力持ちに徹しているというイメージである。
グラストップは開口面積が大きく、採光性は高かった(筆者撮影)
後席スペースも広大。4人で遠出をするのも苦にならないだろう(筆者撮影)
後席はニールームに余裕があり快適(筆者撮影)
能登半島は2024年1月の巨大地震の後遺症から癒えるにはまだほど遠いという状況で、半島を縦貫する「のと里山海道」は仮復旧区間だらけ。進行方向に向かって斜めに走る大きな段差、クルマを鋭く左右に振るダブルレーンチェンジのような箇所など、まるでテストコースのようなハードコンディションだった。
そんな路線でも安心、安全、快適なクルーズがいささかも乱されることがないという“大船に乗った感”はXC60の真骨頂と言える。
クルマが過度に自己主張をしないというのは内外装の仕立てにも表れていた。外装はギラついた要素が少なく、このクラスの中ではかなり地味なほうだが、自然、史跡、商業施設などどこに置いてもみすぼらしさや違和感はない。
インテリアは今流行のド派手なイルミネーションなどは持たない半面、各部が丁寧に仕上げられており、シートのタッチやスイッチ類の手触りは高質なものがあった。こういう奥ゆかしさ重視のモデルは近年少数派で、それも独特のポジションを得る原動力となっているように思われた。
ボルボXC60の前席。シートのタッチ、体圧分散などの機能性はプレミアムセグメントに相応しいものだった(筆者撮影)