XC90で変わった評価とXC60/40で高まった名声、ボルボの次の一手は?
今回のロードテストを通じて実感したのは、心地良い移動とはどのようなものかということについてのボルボの思想がよく見えるクルマになっているということだった。
プレミアムブランドの作り手がこぞってどういう風に刺激を盛り込んで味を作っていくかということに腐心する中、刺激を徹底的に排し、余計な味を抜いていくというマジョリティと真逆のアプローチによるクルマ作りは、それ自体が独特な味になるのだ。
能登半島・田鶴浜の悦叟寺にて。こういう場に置いたときにクルマが目立たないのがボルボデザインの特徴のひとつ(筆者撮影)
だが、そうやって確立したブランドイメージをこれからも守り続けるのは大変なことだ。ボルボが堅牢なクルマを作るスウェーデンの一風変わったメーカーという立ち位置からプレミアムブランドを目指しはじめたのは1999年にフォードがボルボの乗用車部門を買収してボルボ・カーズとして再出発した時のこと。
そのボルボを競合ブランドがライバルとして本格的に認知する契機となった第2世代XC90を送り出すまでには、経営危機に陥ったフォードが2010年に中国の浙江吉利控股集団に株式を譲渡したのを挟んで15年もの年月を要した。
その後、2017年に出したXC60がワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを、2018年にはXC40が欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど急激に名声を高めたが、その3モデルはすべてフルモデルチェンジを経ないまま今日に至っている。
欧州では12月に2035年の内燃機関全廃という目標が一部緩和され、日本でも大々的に報じられたが、CO2削減のコアテクノロジーをBEVに置いているという欧州政府の方針や規制自体は大きく変わっていないということを考慮すると、今からこの3モデルをエンジン車としてフルモデルチェンジすることには相応のリスクが伴う。
といって、トランプ大統領の再登板でアメリカがパリ協定からの離脱を表明し、CO2削減の世界的な枠組み自体が危機に陥っている今、電動化に従来通りまい進するのも梯子を外されるリスクがある。
「ボルボはBEVでは吉利と強力なタッグを組めますし、すでに高度なプラグインハイブリッドを自前で持っているのですから、その気になればストロングハイブリッドも作れるでしょう。フレキシビリティは結構あると思いますよ」(国内自動車メーカーの開発系幹部)
という見方もあるが、年産70万台クラスという小規模メーカーであることを考えると二正面作戦は厳しい。しかも、どの道を選ぶにしてもプレミアムブランドになった以上、モノの分かったユーザーを唸らせるくらいのクルマを継続的に出していかなければならないのである。その意味ではボルボのブランドとしての真価が問われるのは、むしろこれからということになろう。
ボルボXC60。能登半島北岸にて(筆者撮影)







