日台連携で半導体人材を育成
劉氏は昨年7月まで、TSMCの本社があり、半導体関連企業が集積する台湾・新竹の明新科技大で学長を務め、台湾で初めて半導体学部を作った人物として知られる。現在は銘伝大に移り、同大でも半導体学科を新設し、日本と連携した「半導体人材」の育成を推進しようとしている。ASEの首脳陣が銘伝大出身であることも、こうしたプロジェクト推進の支えとなっているようだ。

劉氏は、九州共立大の他にも日本の大学との連携を進めていきたい考えを示し、「技術系、管理系両方の人材育成を進めたい。いずれも2年間は台湾で最先端の半導体産業を学んでもらう必要がある。日本から台湾に留学してくる学生には、ASEの協力により実習手当を月に1000ドル支払う計画も進めている」と説明する。さらに、日本の高校を卒業後に4年間、銘伝大で半導体を学ぶコースや日本人社会人の学び直しコースなどを新設することも検討している。
こうしたプロジェクトが進めば、日本にもメリットがある。北部九州は一部地域を除いて少子高齢化が進むと前述したが、人口減に加えて、これまで雇用の場が少なかったため、若者が流出してしまうといった課題があった。台湾で半導体の最先端を学び、その受け皿企業が北部九州にあれば、若者が少しでも地元に定着することにつながることになる。
九州共立大と銘伝大との間を取り持ったのが、福岡県豊前市の後藤元秀市長だ。同市は北九州市から電車で50分程度の距離にあり、大分県境に近い福岡県東部に位置する。人口が約2万3000人と福岡県内では人口が最も少ない市として知られ、少子高齢化が進んでいる。
こうした中、後藤氏は台湾との関係強化を基軸に「国際共生」を推進することで、地域の活性化を図る地方都市としては異色の戦略を打ち出している。