
~ 中小企業の今とこれからを描く ~
日本政策金融公庫総合研究所では、中小企業の今とこれからの姿をさまざまな角度から追うことで、社会の課題解決の手がかりを得ようとしています。最新の調査結果を、当研究所の研究員が交代で紹介していきます。
今回から2回にわたり、スポーツによる地域振興について考えます。
(桑本香梨・笠原千尋:日本政策金融公庫総合研究所)
東京マラソンの経済波及効果は787億円
2025年3月2日に開催された東京マラソン2025では、1万7230人の外国人を含む3万7480人のランナーに加えて、沿道には104万人超の観衆が集まったという。その経済効果が、4月18日に一般財団法人東京マラソン財団により発表された。
ランナーへのアンケートなどをもとに推計した直接消費額は361億5400万円で、2次波及効果まで含めると787億2600万円に達したという。これによる東京都の税収は、65億円と見込まれている。

図1 東京マラソン2025参加者(沿道観衆やボランティアを含む)による消費額
(※注)外国籍ランナーの交通費は都内交通費。外国籍ランナーによる事前消費は除く。
コロナ禍が収束し、日本を目指すインバウンドが増えつつある今、スポーツを資源に観光客を呼び込み、地域の活性化につなげようという動きが活発になっている。
2023年に閣議決定した「観光立国推進基本計画」には、「スポーツツーリズムの推進」が織り込まれ、「スポーツの参加や観戦を目的とした地域の訪問や、地域資源とスポーツを掛け合わせた観光を楽しむスポーツツーリズムの推進を通じ、国内旅行需要の喚起や(中略)スポーツへの志向性の高い訪日外国人旅行者の訪日促進を図る」と書かれている。
2015年に発足したスポーツ庁による「第3期スポーツ基本計画」(2021年度)でも、12の施策の一つに、「スポーツによる地方創生、まちづくり」が掲げられている(図2)。
この「スポーツによる地方創生、まちづくり」は、スポーツツーリズムや大会開催などによる観光客の呼び込みに限らない。
スポーツ庁「スポーツを通じた地域振興・地域活性化」で取り上げられているコンテンツをみると、地域スポーツクラブや学校の部活動、障害者スポーツなども含まれている。スポーツを通じた住民の健康増進やつながりの強化もまた、地域活性化策の一つとされているのである。
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