阪長友仁氏(筆者撮影)

 金属バットの改定、タイブレークの導入、さらには7回戦制の検討など、高校野球は改革へと舵を切っているが、これとは別に、高校野球界で、次々と新しい試みを始めている野球人がいる。

 阪長友仁氏は1981年大阪府生まれ。大阪出身ながら新潟明訓高校に進み、甲子園でホームランを打つ。立教大学に進み、4年生時にはキャプテンを務める。

一流選手を育てる土台には「選手が野球を好きになること」が

 野球エリートの道を歩んだが、卒業後は、旅行代理店勤務ののち、青年海外協力隊としてコロンビアで野球の振興、普及活動などを行った。その後JICAの企画調査員になったが、この時期にドミニカ共和国に赴きMLB球団のアカデミーで現地の高校生世代に対する指導に触れ、深い感銘を受けた。

 阪長氏は語る。

「ドミニカ共和国の子どもたちは最終的にはメジャーリーガーになりたい。指導者もみんなをメジャーリーガーにしたい。そこから逆算して、技術やメンタルを学んでいくわけですが、指導者は『その根底に、もっと大事なものがある』というんです。それは『その選手が野球を好きになれるかどうか』ということです」

 阪長氏は帰国後、大阪の少年野球チーム「堺ビッグボーイズ」の指導者になりドミニカ共和国の考えを取り入れた指導を行う。

「堺ビッグボーイズ」は、現DeNAの筒香嘉智、オリックスの森友哉など有力選手を輩出した強豪チームだ。筒香がドミニカ共和国のウィンターリーグに参加した際には、阪長氏はアテンド役を務めた。

 阪長氏は子どもの「未来」を考えた指導をする傍ら、中学、高校の指導者を集めてセミナーを始めた。阪長氏は指導者たちに「目の前の試合に勝つことでいちばん喜ぶのは、監督やお父さん、お母さんじゃないですか? そのために子どもが無理をして怪我をするのはいいことでしょうか。子どもたちの夢は、もっと先にあるんじゃないですか?」と説いた。

 こうした取り組みから2015年、高校野球のリーグ戦である「LIGA Agresiva(リーガ・アグレシーバ。当初の名前はLIGA Futura)」がはじまった。