寂しくなった「地方の夜」をどう変えるか

 一点だけ難を言うならば、発着点が横川駅から約4km離れた「峠の湯」であるため、鉄道ではなく車利用を前提にしていることだ。磯部温泉などから往復の送迎とセットになった商品を用意できれば、それは湯の川温泉(北海道函館市)発着の函館山夜景観賞のように、旅先でシームレスに非日常な時間を楽しめる“ナイトタイムエコノミー”の妙味にもなるだろう(なお、日中の「廃線ウォーク」の場合は「峠の湯」から「碓氷鉄道文化むら」のトロッコ列車ラインの利用が有料で可能)。

 安中市観光機構は磯部温泉の宿泊施設など地元の観光関係者との信頼関係も強く、観光地域づくり法人(DMO)でもある同機構をプラットフォームにした地域の観光消費の拡大につながる。

 全国的に人口が減少の一途をたどり、地方では夜の風景がどこも寂しい。だが、新たな仕掛けにより碓氷峠の鉄道遺構や峠の自然が醸し出す魅力に気づき、日中の「廃線ウォーク」にも新たな参加者が増える好循環が生まれれば、物販のチャンスも増えるだろう。それは、観光消費額の拡大だけではなく、地域の新たな雇用創出の実現にもつながり、鉄道廃線を活用した観光(ツーリズム)の新たなカタチになる。

「観光DX」というワードを耳にするようになった昨今、デジタルの力を活かした地元のクリエイティブな発想が、碓氷峠“ならでは”の魅力を新たに開花させようとしている。

ナイトタイムエコノミーの有力コンテンツとして期待されるメロディックライトウォーク(写真提供:安中市観光機構)

※訪問時の注意事項
トンネルなど廃線は現地事情により入れない場合もあります。また、現地では主催者の案内に従っていただき、立入禁止区域には入らないようにご注意ください。

◆碓氷峠廃線ウォーク/光と音の夜の体験型ナイトウォーク「MELODIC LIGHT WALK」(ネットなどで要予約)
https://haisen-walk.com/event/1395