コロナ禍で人気が高まった一戸建てブームもそろそろ終焉か(写真はイメージ)

(山下 和之:住宅ジャーナリスト)

テレワークの増加で変化した「住まいの条件」

 2020年から始まった新型コロナウイルス感染症拡大の影響で在宅ワークが増加し、私たちの生活は大きな影響を受けた。住まいについても、快適に在宅ワークにいそしめる広めの住まいが求められるようになったことで、一戸建ての人気が高まった。

 しかし、今年に入りポストコロナを意識して会社に出勤する人が戻ってくると、再び「一戸建てよりマンション」という人が増えているようだ。時代の変化に合わせて、住まいのあり方も見直す必要がありそうだ。

 重症者が多かった新型コロナのまん延時は、三密を避けて非接触が大切ということから、通勤電車やオフィスでのリスクを避けるため、在宅勤務が急増した。国や自治体もそれを積極的にバックアップした。【グラフ1】にあるように、コロナ禍前には20%台にとどまっていたテレワーク実施率が、1回目の緊急事態宣言発出後には一挙に60%台までアップした。


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※本記事にはグラフが多数含まれています。配信先のサイトで表示されない場合は、こちらでご覧ください。https://jbpress.ismedia.jp/articles/gallery/73058

 それによって、私たちの生活にも大きな変化が出てきた。特に影響が大きかったのが、住まいの選び方だ。

 それまでは、都心やその周辺にある勤務先に通うことを優先して、都心近くのマンションを購入したり、賃貸にしたりするのが当たり前だった。しかし、在宅勤務が定着したことで、通勤時間をさほど気にせずに住む場所を選べるようになった。

 ただ、在宅ワークが増えることで、仕事に集中できるスペースが必要になった。また、家族全員で過ごす時間が長くなったため、それぞれがゆっくりとくつろげる空間も欲しいということで、従来に比べて一回り、二回り広い住まいが求められるようになったわけだ。

 リクルートのSUUMOリサーチセンターでは、コロナ禍で住まい選びがどのように変化したかを時系列にしたがって調査しているが、【グラフ2】にあるように、コロナ禍前の2019年の調査では、「ぜったい一戸建て」「どちらかといえば一戸建て」とする人が合計56%だったのが、2020年の緊急事態宣言発出後の調査では、63%に増えている。


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 反対に、「ぜったい集合住宅(マンション)」と「どちらかといえば集合住宅(マンション)」の合計は32%から22%に減少した。

 都心から多少遠くなってもいい、最寄り駅からの徒歩時間が若干長くなっていいので、より広い住まいを確保しやすい一戸建てのほうがいいのではないかと考える人が増えたわけだ。マンション価格が急騰し、戸建てに割安感が強まっていたことも関係していると思われる。