「新入社員」大好きの日本人と歪んだ副産物
日本人は「新入社員」や「新人」が大好きなようです。何色にも染まっていない無垢さと、どんな形にも変えられる可塑性を見出すのでしょう。私はテレビ朝日で新卒採用に長らく関わりましたが、日本の企業社会には新人を愛玩する文化があるのだと実感しました。
もちろん一定の条件がつきます。新人には、お行儀の良さ、従順さが要求されるということです。
「今年の新人はマナーが悪い」——
採用責任者である私を捕まえて、クレームを言われたことがあります。それ以外にも、「今年の新人は○○だね」と、毎年言われ、良くも悪くも何らかのレッテルを貼りたい人が多いことを思い知らされました。みなさんの会社でも似たようなことを言う人がいるのではないでしょうか。
これは、新人を愛玩する文化の一つの現れだと考えています。組織において、新参者は「飼い馴らされるべきもの」という思想が根底にあるようにも思います。
この文化には歪んだ副産物があります。
新人たちは個性や自分らしさを封印し、組織に流れる違和感を無視し、異論反論を抑圧し、従順な良い子を演じることが、組織でうまくやっていく極意だと悟るのです。
そのような教示も示唆も一切していなくても、持ち前の協調性や適応力を発揮して組織の人になっていきます。まるで、ジグソーパズルのピースがはまるように。
新卒一括採用は、年功序列や終身雇用とセットで、「硬直した人事制度だ」として学者や評論家から批判され、やめるべきだという意見さえ出されます。日本経済が長期低迷した理由の一つだとの見方もあります。