AIの登場は採用選考にプラスなのか?
最近、耳にすることが多くなったAI(人工知能)による選考です。履歴書やエントリーシートのスクリーニング、WEB面接での表情分析、適性検査の評価など、AIを駆使した選考を実施している企業が増えています。
AIの進化は日常生活の中で実感しています。例を挙げれば、AIアナウンサーがニュースを読む時の発音や滑舌の安定感です。日本語の宿命として文末は「た」になることが多いのですが、「てゃぁ」と発音するアナウンサーやナレーターがたくさんいて、気になって仕方がありません。私が長年、テレビ局に在籍したためかもしれませんが、AIの正確さに安堵感を覚えています。
もはやAIは、最難関と言われる東京大学理科3類の試験で合格できる実力に達している(2025年4月29日 読売オンライン)ほどですから、企業が採用選考でも導入するのは自然の流れなのかもしれません。
人間は好き・嫌いの感情に左右されます。また、眠い、疲れている、お腹が空いているなど、身体の状況にも影響を受ける可能性があります。つまり、不安定で曖昧な人間が、人生を賭けた採用選考に臨んでいる人間を判断することは、不確かで脆弱さを孕んでいます。
それに比べて、AIは、いつも一定でデータに基づいて判断します。だから、公平で「間違った判断をしない」という安心感があるのはその通りでしょう。
もっとも、AIの判断が一定で間違えないのは、アルゴリズムの世界のことです。AIは過去の採用実績や統計的傾向に基づいて判断を下します。たとえば、「体育会系で主将の経験がある」というデータが入力されれば、これまでの実績から同じような属性の受験者が高い評価を得やすくなります。
過去に活躍した人物のデータを入力すれば、似たような人材を抽出してくれる「賢い頭脳」として重宝しそうです。しかし、同質的な人材を再生産することが本当に企業にとって有益なことなのか立ち止まって考えるべきです。貴重な人間性がアルゴリズムの闇に埋もれていく可能性があるからです。AIに組み込まれたデータに合致しない人が排除される仕組みは、多様性の追求とは矛盾しています。
AIを使うのは企業だけではありません。