マネジャーとプレイヤーを兼務

 産業能率大学の調査では、プレイヤーとしての役割が全くない管理職は0.5%で、99.5%の課長がプレイヤーとマネジャーを兼務していることがわかっています。

 1人の上司が直接管理する部下の人数のことを、人事用語で「スパン・オブ・コントロール」と言います。指示する権限を持つ人の範囲、管掌範囲のことです。一般的には適正な部下の数は6〜7人前後と言われていますが、組織のフラット化は、このスパン・オブ・コントロールの適正範囲をはるかにオーバーするような状況を生み出していきました。

出所:パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」
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 筆者の調査でも、やはり企業規模が増加するにつれ、管理職1人当たりの役割は増加し、それに伴って負担感が上がる傾向がクリアに見られました(図表3・上図)。

 また、企業規模が大きくなるほど管理職のやるべきことは増えていきます。例えば、従業員数50〜100人未満の企業で働く中間管理職の役割数は12.9個なのに対し、従業員数1万人以上の企業で働く中間管理職の役割数は20.4個と約1.6倍にもなり、負担感も増加しています(図表3・下図)。

 徐々にミクロなレベルのトレンドに目を移していきましょう。

 職場レベルで指摘できる近年のトレンドの第1は、「ダイバーシティ」です。男性正社員を核として職場の同質性の高かった日本企業も、ダイバーシティ推進と人手不足の波の中で、従業員の属性は雇用形態(パート・アルバイト、派遣社員、再雇用後の嘱託社員など)、年齢、国籍などが多様化していきました。

 一律的で同質的な集団であれば、やる気の出させ方も、指示の仕方もパターンは少なくてすみますが、今の日本の職場はそうではありません。この「人の多様性」こそが、職場の管理職の負荷を増やす要因の1つです。

「社員、パート、派遣とそれぞれ考え方が違う。仕事の基礎など知識から違うから理解してもらうのが大変」(37歳、女性、医療・介護)

「女性パート従業員がほとんどで、指示したことに対して理解してもらうのに苦労する。わがままで自分勝手に動く従業員が多くて困っている」(57歳、男性、製造業)