- かつては喜ばれていたはずの管理職への昇進が「罰ゲーム化」している。そう分析するのは、パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児氏だ。
- しんどいのは管理職自身のマネジメント・スキルが低いから、という考えは「筋トレ発想」で、ナンセンス。部下との対話とは「相互行為」で一方の訓練で解決しない。
- 小林氏の新刊『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(インターナショナル新書)から一部抜粋して、2回に分けてお届けする。後編では、「罰ゲーム」から脱する処方箋を伝授する。(JBpress)
【罰ゲーム化する管理職・前編】「少数で成果はすぐ出せ、パワハラは厳禁!」職場は地雷だらけでメンタル疾患急増
まるで迷路のような解けないパズル、バグ(課題)だらけの「クソゲー」となりながらも放置されている管理職。しかし「管理職不要論」のようなユートピアは、ほとんどの企業ではリアリティがないでしょう。では、このゲームの仕様をどのように修正していけばいいのでしょうか。本章で述べていくのは、この「罰ゲーム」の「解消法」です。
管理職の「罰ゲーム化」を修正するには、大きく4つの方向性があります。その4つとは、「フォロワーシップ・アプローチ」、「ワークシェアリング・アプローチ」、「ネットワーク・アプローチ」、「キャリア・アプローチ」です(図表5)。後編ではこの中から、「フォロワーシップ・アプローチ」について議論していきますが(その他についてはぜひ、『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』をご覧ください)、その前に、この管理職問題に対策を打とうとする多くの企業がハマってしまう罠について、警鐘を鳴らしておく必要があります。
その罠とはすでに触れた、管理職の負荷が高いのは、管理職自身のマネジメント・スキルが足りないからだという発想です。管理職に元気が無い、不活性化しているという課題自体は、昨今多くの企業が問題視し始めています。
しかし、その対策を考えようとすると、多くの企業人が「マネジャーたちにスキルを身につけさせよ」「やる気を出させよ」「エンゲージメントを高めよ」という発想に流されていきます。管理職問題を、スキルや意欲といった属人的なものに集約させ、研修トレーニングのメニューを見直したり、追加することを実施します。これを筆者は、マネジメント課題の「筋トレ発想」と呼んでいます。
会社という組織をマネジメントするに当たって重要なことは、他にいくつもあります。例えば人事部が適切に社員の働き方をコントロールできているか、無理の無い事業戦略が立てられているか、ITへの投資が十分なものかどうかなどです。そうした複数のピースのうちの一つである「管理職のスキル」だけに、管理職の問題点を集約し、帰責させようとする思考。この思考こそがまさに「負荷のインフレ」のループを発生させるとともに、「会社と現場のすれ違い」を加速させています。