- 昨今、「パーパス経営」が大ブームだ。企業の「存在意義」を全ての従業員に浸透させ、活力を呼び起こし成長につなげる、というのがお題目である。
- だが、「経営者が勝手に盛り上がっているきれいごと」と受け流され、社内にしらけムードが漂う企業も少なくない。
- 「ダイバーシティ」が叫ばれる中、1つの価値観にまとまれ、という発想にはそもそも無理がある。「マイ・パーパス」に期待をかけても、それを持つ個人は極めて少ない。では、どうしたらいいか。(JBpress)
(小林祐児:パーソル総合研究所 上席主任研究員)
【連載】
第1回:「仮面夫婦化」する会社と個人、転職・副業・リスキリング・・・ぜんぶ幻想
「社畜」の心が会社から離れ始めた
近年の企業経営のトレンド・キーワードとして「パーパス経営」があります。パーパスとは、「企業の存在意義」ともいえる指針であり、企業が何のために事業を営んでいるのかを示すものです。パーパスと銘打たずとも、企業理念やミッションといった経営の大目的に改めて向かい合う企業が近年増加しています。
その背景には、社会的責任を重視するコーポレート・ガバナンスのトレンドがあります。しかし、最も大きな要因は、企業からの「遠心力」が働いていることです。コロナ禍からの回復による人材不足で売り手市場になっています。さらに、就業価値観の多様化を受け入れる「ダイバーシティ」の推進があります。これらは、これまで「社畜」的に組織に取り込まれていた個人が企業から離れていく遠心力として作用しています。
そうした状況の中、バラバラになってしまいがちな組織になんとか「求心力」を働かせ、一体感を保つための有効な要素はないかと、危機感を抱いた経営者が反動的に理念やパーパスといったものに注目しているのです。