1on1の時には表情や態度などの非言語情報も重要なヒントになる(提供:アフロ)

 上司と部下の間で行われる1対1の定期的なミーティング「1on1」。評価のための人事面談とは異なり、部下の成長を支援するための人事施策として知られている。2012年にヤフーが人事制度の目玉として取り入れて以来、人材育成のトレンドとなった。今では、多くの企業で導入が進む。
 
 もっとも、1on1が一般的になる一方で、現場の上司からは「どう接すればいいか分からない」「うまく機能しない」という声もしばしば挙がる。なぜ1on1が機能しないのか。ヤフーの人事責任者として1on1を導入した本間浩輔氏(Zホールディングス・シニアアドバイザー)が見る、1on1の違和感とは──。
 

◎【第1回】大企業の7割が導入する1on1ミーティング、うまく機能しないのは誰のせい?
◎【第2回】「1on1が機能しない」と嘆く企業に欠けている上司が部下の話を聞くという風土
◎【第3回】上司の多くが勘違いしている「傾聴」、1on1を成功させる二つのポイントとは

◎【第4回】部下との1on1でしばしば訪れる「沈黙」、上司は決して口をはさんではならない

(本間浩輔:Zホールディングス株式会社 シニアアドバイザー)

 1on1について企業などで話をすると、「メモを取るべきでしょうか?」という質問を受けることがあります。

 確かに、メモを取れば前回の話を振り返ったり、自分のアドバイスを客観的に見直したりすることができるという利点があります。

 また、一生懸命メモを取って話を聞いているという聞き手の姿が、話しやすい雰囲気につながるという側面もあると思います。やはり人間は話を聞いてくれる人に話したい思うものですから。

 一方で、メモを取ることのデメリットもあります。それは、メモを取ることに集中しすぎて言葉以外の情報、すなわち表情や態度、声のトーンといった「非言語(non-verbal)」の情報を見落としてしまうということです。

 これまでの連載記事を通して、私は何度か「1on1とはコミュニケーションのあり方である」という話をしてきました。ここで言うコミュニケーションとは、何も発する言葉のみを指すわけではなく、非言語の部分も含めて対話をしています。

 この非言語の部分から得られる情報はとても多く、メモを取ることに一生懸命になりすぎると、相手のサインを見逃すことにもなりかねません。

 話している声がうわずっていた、話すスピードが変わった、特定のテーマになると表情が変わる、話しながら目が泳いでいる──など、些細な変化から得られる情報が1on1ではとてつもなく大きいんです。

 一例を挙げます。