「フォロワーシップ・アプローチ」とは

 今回見ていく「フォロワーシップ・アプローチ」とは、管理職の部下、つまりフォロワーである「メンバー層」へのトレーニングを増やす、というアプローチです。

 国際的に日本企業の人的投資額は極めて低いことが指摘されています。そして限られた人材開発予算の宛先も、「新人」と「管理職」に偏り続けています。必然的に、日本企業の人への投資が最も薄くなる領域は、非管理職である中堅以上のメンバー層への訓練です。40〜50代の非管理職に聞けば、10年以上研修を受けていないという人が半数近くに上ります。

小林 祐児(こばやし・ゆうじ) パーソル総合研究所上席主任研究員
上智大学大学院総合人間科学研究科社会学専攻博士前期課程修了。NHK放送文化研究所、総合マーケティングリサーチファームを経て現職。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。単著に『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎新書)、『リスキリングは経営課題』(光文社新書)、共著に『残業学』(光文社新書)、『働くみんなの必修講義 転職学』(KADOKAWA)など多数。

 今、このような人材投資の少なさが省みられ「リスキリング」と「DX」が話題になり、研修やトレーニングの少なさが見直されようとしています。しかし、現在のリスキリングの議論は「デジタル技術」や「DX人材」といったものに偏りすぎています。こうした日本のリスキリングの課題と処方箋については、すでに拙著『リスキリングは経営課題』(2023年、光文社)という本で1冊まるごと議論していますので、そちらをご参照下さい。

 この「フォロワーシップ・アプローチ」で議論したいのは、ITスキルのようなオペレーショナルなスキルではなく、対人関係やコミュニケーション、部下育成といった領域、つまり「ピープル・マネジメント」の領域です。

 すでに述べたように、管理職の頭を悩ませ、最も心理的負荷を高めていたものこそ、まさに「部下とのコミュニケーション」の問題、つまりピープル・マネジメントの問題でした。