短期間で成果を求められるようにシフト

 90年代以降は、経済のグローバル化も一層進み、事業の在り方だけでなく、コーポレート・ガバナンスの在り方も大きく変えることになります。それまで中長期的志向の経営であった日本企業も、グローバル水準のコンプライアンスを徹底しつつ、短期志向化する経営サイクルの中で確実に業績を上げ続けなければならなくなりました。

 海外投資家の存在感が増していく中で、SDGsが叫ばれ、CSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)投資が活性化する中で、世間と投資家の目にさらに厳しくさらされてきました。

 こうした経営環境の変化を受けて、企業の人材マネジメントにも変化が生じます。代表的なものが90年代後半からの「成果主義」と呼ばれるムーブメントです。短期的業績と従業員処遇をより直接的に紐付ける施策が、多くの企業で導入されていきました。役割等級、年俸制、目標管理制度といった個別給与にメリハリをつける人事制度が中小企業含めて一気に広がりました。

出所:筆者が独自に作成
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 その中で進んだのが、前章でも触れた組織のフラット化です(図表2)。2000年代初頭に、組織のフラット化を実施した企業は47.1%にも上りました。

 例えば、日本を代表する企業であるトヨタ自動車は、1989年に組織のフラット化を進めた結果、課レベルの組織数は758から633に縮減され、副課長以上の役職者は1800人から約900人へと半減しました。

 こうした成果主義導入と組織のフラット化により、管理職は、短期的な成果を少人数で達成するよう求められるようになりました。同時に部下のマネジメント業務だけでなく、数字責任も持ち、第一線のプレイヤーとして現場に出て汗をかくことも課せられるようになりました。いわゆる「プレイング・マネジャー化」の進行です。