ダイバーシティーゆえの苦しみ
高齢化が進む日本の組織では、「年齢」というダイバーシティが生む問題も、厄介なものになっています。「部下マネジメントの困難」という管理職の負荷要因をさらに分解してみると、「部下との世代間ギャップによる意思疎通の困難さ」が強く影響していました。世代間ギャップの中でも、特に「年上部下」の問題は、後ほど詳しく扱っていくことにします。
部下の同質性が低下したにもかかわらず、従来のマネジメント方法に固執すれば、部下との間に様々なハレーションが生じます。世代間のコミュニケーション・ギャップが生まれ、メンタルに関するリテラシーが高まる中で、人間関係のトラブルによるメンタルヘルスの問題が急速に増えてきました。
従業員がメンタルヘルス疾患を発症し、欠勤、休職する職場が後を絶たない時代になったのです。精神障害の労災補償状況を見れば、労災請求の仕組みが整ってきたこともあり、令和4年度の請求件数は2683件にも上り、平成30年度の1820件と比べ1.5倍近く増えました。ここにはハラスメントを原因とするものが多く含まれています。
こうした中で施行されたのが、パワーハラスメントの防止措置義務を盛り込んだ労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)です。職場におけるパワーハラスメント対策が令和2年6月1日からは大企業に、令和4年4月1日からは中小企業に義務化されました。