ホンダがCES2025で初公開した、2026年発売予定の「ホンダ ゼロ サルーン」(左)と「ホンダ ゼロ SUV」(右)。同シリーズではアシモOSを導入する。(写真提供:ホンダ)

クルマが「動くスマホ」になる——。そんな表現をネット上で見かけるようになって久しい。クルマのスマホ化で重要なのが、ビークルOS(オペレーティング・システム)だ。直近でのホンダの動きを紹介しながら、ビークルOSの過去・現在・未来について考えてみたい。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 ホンダは日本時間の2025年1月8日早朝、米ネバダ州ラスベガスで開催中のITと家電に関する世界最大級の見本市「CES2025」で、2026年から販売する次世代EV「ゼロシリーズ」の量産プロトタイプを世界初公開した。
 
 今回の発表の中で、ホンダ独自のビークルOS「ASIMO(アシモ)OS」についても公表された。

 ビークルOSとは、車内の情報を管理するハードウェアと、情報を使って機能するソフトウェアとの間にある、ソフトウェアプラットフォームという位置付けだ。

 また、アシモは、ホンダが独自開発した二足歩行ロボットの名称。「アシモで培ってきた外観認識や、人の意図を汲み取り行動する頭脳を進化させた」としている。

 アシモOSが目指すのは、「超個人最適化(ウルトラ・パーソナル・オプティマイゼーション)」。アシモOSとAI(人工知能)の連携により、走行状態だけではくユーザーの感情や意図を複合的に理解したホンダ独自サービスを提供するという。
 
 その上で、ホンダは「ビークルOSはスマホのOSと同じ」と説明する。

 iPhoneでのiOSや、アンドロイドフォンでのアンドロイドOSと、理屈上は同じような存在だという訳だ。

 例えば、スマホではネット上から様々なアプリケーション(アプリ)をインストールする。これらのアプリを動かすソフトウェアの基盤がOSで、OSを介してユーザーは音声や文字、画像などをインプットしてアプリを使うことができる。

 一方でクルマの場合、クルマの「走る・曲がる・止まる」といった運動特性や、オーディオや映像といった車内エンターテインメントをビークルOSが管理する。

 さらに、そうした各種機能を実現するソフトウェアを、クルマと接続した無線通信網を介してダウンロードして追加したりアップデートしたりできる。ちなみに、こうした仕組みを「OTA(オン・ザ・エア)」と呼ぶ。

 こうしたソフトウェアが重要な役割を果たすクルマはSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)と呼ばれ、ビークルOSの重要性は急速に高まっている。

 ただし、自動車業界やIT業界の各方面と意見交換すると、SDVとビークルOSについては現時点で明確な定義はない。そのため、自動車メーカーそれぞれでSDVやビークルOSに対する認識が若干違うのが実状だ。

 そんなSDVやビークルOSの重要性が議論され始めたのは、2010年代に入ってからとまだ日が浅い。