ハンドルの「切れ味」がよい理由とは

 重量差については今回、マイルドハイブリッドシステムとストロングハイブリッドシステムを真横に並べた展示を見たことで、ひと目でその違いが分かった。ストロングハイブリッドシステム自体ががっしりしているのだ。

トランスアクスルの展示。マイルドハイブリッド用(写真左)、ストロングハイブリッド用(写真右)(写真:筆者撮影)

 重量増への対応として、サスペンション側も調整している。ゴム製品である各種ブッシュの変更や、ショックアブソーバーの減衰力を変更した。

 結果的に、ドライバーがクルマに対して「重ったるさ」を感じるのではなく、がっしり感や上質な乗り味を感じることができる。

ストロングハイブリッドのトランスアクスルの完成試験工程(写真:筆者撮影)

 次に、旋回時のクルマ全体の動きの良さについて検証する。

 がっしり、かつ上質になった乗り味に、ハンドリングの滑らかさが上手く連動している。

 マイルドハイブリッドの場合、ハンドルを直進状態から切り始める際、クルマが曲がりはじめるまでに少し時間がかかる。一般的に、オン・センター・フィーリングと呼ばれる領域でその時間が長いと、「ハンドリングが緩い」と表現されることもある。

 クロストレックの場合、車重、車格、商品性などを加味して、マイルドハイブリッドでのオン・センター・フィーリングは決してネガティブ要因ではない。むしろ、クルマの性格をうまく表現していると感じる。

 対してストロングハイブリッドでは、オン・センター・フィーリングに緩さがほとんどない。つまり、ハンドルを切り始めたらすぐにクルマのノーズが動き出すのが分かる。

 これは、前述のサスペンションセッティング、さらに電動パワーステアリングの改良によるものだ。アクセルを踏みながら旋回する際のクルマの動きがとても扱いやすい。

 それを実現しているのが、電磁式の電子制御カップリングだ。駆動用モーターの後部に直結していて、プロペラシャフトを介して後輪を駆動させる装置である。

トランスアクスルを分解して展示した様子。右側は電子制御カップリングの部品(写真:筆者撮影)

 その中身は、多板クラッチを操作するもので、これまでスバルが採用してきた機械式と比べてトルクの伝達速度が3割も向上している。

 そのため、アクセル操作に対して、前輪と後輪の駆動力のバランスがさらによくなり、クルマがドライバーの意のままに曲がるのだ。

 もうひとつ、走って感じたのは電動車として「気になる音が少ないこと」だった。その理由も、今回の取材で目で見て分かった。